2017年3月5日日曜日

ニース研修春2017 (14) 3/4

ニースの日々も明日が最後。土曜日の今日は一日フリーの日だった。
午前中にフェラ岬にあるエフレッシ・ド・ロットシルド別荘と庭園への遠足を学生に提案したのだが、来たのは5名。この手のモニュメント、文化財に対する反応の薄さには正直ちょっとがっかりである。
今日は朝方は大雨だった。ただ雨はすぐに弱まり、その後午後までは降ったり、晴れたり、曇ったりのはっきりしない天候だった。午後の後半になり、雨はやんだ。
雨降りでなければプロバンス鉄道に乗って、山中の城塞村アントルヴォーに行くつもりだった。


ロットシルド別荘・庭園は、20世紀はじめにヨーロッパの財閥として有名なロスチャイルド家の末裔のひとり、ベアトリスが莫大なお金をつぎ込み、その洗練されたロココ趣味の究極を具現化した夢の別荘・庭園である。その贅沢さと趣味のよさは、昨日見たケリロス別荘に比肩する。ニース近郊の観光スポットとしては、私は強力に推したい場所の一つだ。ニースからバスで30分ほど行ったところ、昨日、学校の遠足で行ったボリュ=シュール=ラ=メールのケリロス別荘から1キロほどのところにあるフェラ岬の高台にこの別荘はある。

開館時間である10時ちょっと過ぎに別荘に着いた。入場料は大人14ユーロ、学生は11ユーロ。別荘内のオーディオガイドの料金もこれに含まれる。「日本から来た学生です」と言ったら学生証を要求されることなく、学生料金が適用された。やはり日本の大学学生証を拒絶しようとしたマチス美術館の切符窓口の人は例外だ。今日の午後行った旧市街のラスカリス宮でも、日本の学生証で通用し、入場料が無料になった。

開館直後に入場したため人が少なかった。最初のうちはわれわれのグループのほぼ貸し切り。夏のバカンスシーズンだとこうはいかないだろう。人のいない静かな環境で、約2時間、別荘と庭園を見学した。内装の装飾、細工、絵画や彫刻、家具、展示されている食器や衣装がすべて逸品なので、それらをひとつひとつ注意深く見ていけば丸一日あっても時間は足らないだろう。別荘内の各部屋の内容を説明するオーディオガイド(日本語もある)も充実している。


昼すぎにニースに戻る。5人いた学生のうち、1人とはここで別れる。残り4人と昼飯を食べに行く。ニース最後の外食はチュニジア風クスクスにした。Google Mapで「Nice couscous」で検索し、降りたバス停から一番近い店に行った。私以外の4人の学生はこれがはじめてのクスクスだった。スープとスムールが大きな容器に入れて出され、それを取り分ける。こういう豪快さこそクスクスという感じがする。私はいつものように子羊肉のローストを添えた。クスクスがはじめての学生たちにも大好評でみんなたくさん食べた。もっともクスクスが苦手な日本人というのは私はあまり会ったことがない。店員の応対も感じがよかった。

隣のテーブルに座っていたニースに住むフランス人の家族にいろいろ話しかけられた。ロットシルド別荘に行くバス停でも、おばあさんに話しかけれた。無防備に知らない人に話しかけるというのはフランスでは珍しくない。日本でも大阪のおばちゃんはけっこう話しかけてくるが。

クスクスを食べたあとは、旧市街にある17世紀バロック様式の邸宅、ラスカリス宮を見学に行く。ラスカリス家はニースの貴族のひとつ。この建築物は19世紀後半に形成された漆喰壁のほかの建物と一体化してしまっていて、外側は路地のなかに埋もれてしまい地味な感じだ。しかしその内部がすごい。バロックと言えば絵画、文学、音楽を思い浮かべるが、この邸宅の装飾の過剰さ、濃厚さは、まさにバロックを感じさせるものだ、肉感的で暑苦しい装飾で埋め尽くされている。その趣味は、フランスよりもむしろイタリア的なものを感じる。ラスカリス宮はフランスで第二の規模の楽器博物館でもあり、古楽器の展示も非常に興味深いものだった。

ラスカリス宮のそばにあるやはり17世紀バロック様式のジェズ教会内部を見学する。ラスカリス宮からの流れでこの教会を見ると、やはりこの教会の内装もラスカリス宮と同じ美学で作られていることがよくわかる。聖域ではあるが、その装飾は過剰かつ官能的だ。


16時からニースのオペラ座に、ブラームスのバイオリン協奏曲とチャイコフスキーの交響曲四番のコンサートを聞きに行く。このコンサートは二日前にニース駅のポスターで知った。土曜日が雨予報でアントルヴォー行はなくなりそうだったし、16時開始だったのでロットシルド別荘への遠足を午前にずらせばうまいぐあいに見に行けることがわかり、急きょ行くことにしたのだ。学生券はたったの5ユーロである。ニースは多くの美術館は学生無料だし、オペラ座のプログラムでは学生料金は5ユーロだ。5人の学生がコンサートを聞きに来た。私は19ユーロの席を取った。オペラのときと違い、5階席の正面三列目で、舞台はよく見えた。ただし3列目の前の座席との間隔の狭いこと狭いこと。日本の国立劇場の3階最後列席より狭いかも。座席はかなり急こう配に並んでいる。


私はクラシックのオケの演奏のよしあしはよくわからないのだが、素晴らしいコンサートで、特にチャイコフスキーの交響曲は音楽のなかに没入することができた。指揮者のRoland Boerについては全く知識がないが、ダイナミックでめりはりのある音楽を作ることのできる優れた指揮者のように思った。ニースのオペラ座は料金が安いし、劇場の雰囲気もどこか気さくで庶民的な感じがする。


コンサートの後は、いつもニースに来たときにいつも寄るチョコレート店とチーズ屋に行って、妻へのお土産を買った。これで私のミッションはコンプリートだ。
明日は昼前に空港に行くので、ニースでは何もできない。


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