2017年3月8日水曜日

レンヌ・カン・パリ2017春(3)3/7

フランスでの宿泊は、安ホテルばかり泊まっているからではあるが、ろくな思い出がないのだが、レンヌのホテルは清潔で明るく、快適だった。スタッフもみな感じがいい。あまり観光できなかったが、観光ポイントの旧市街にも行きやすい場所だし、駅にも10分ほどでスーツケースを転がして歩いて行ける距離だ。またレンヌに泊まる機会があったら、このホテルを選ぶだろう。

レンヌからカーンまでは150キロほどだ。TGVを使うとル・マン経由で乗換があり、距離も伸びてしまうので、在来線を使ったほうが早いし、安い。しかしカーン行きの在来線は一日に数本しか走っていない。
夕方6時半にカーンで女優の竹中香子さんと会う約束があったので、それに間に合うようにするとなると朝9時レンヌ発の在来線列車に乗るしかなかった。時間は2時間45分かかり、運賃は38ユーロ。これに乗り遅れると直通便は夕方までないので、朝6時に起床し、余裕をもって8時過ぎにホテルをチェックアウトした。

フランス国鉄では、何番線に列車が入るかは掲示モニタに表示される。レンヌ駅では出発20分前に表示されるとなっているが、9時5分前になってもカーン行き在来線の入線ホームは表示されない。しかし「定刻通り」の表示も出ているので、不安になる。インフォメーションに聞きに行こうと思ったときに、「10分遅れ」の表示が出たので、そのまま待っていることにした。私の乗るカーン行き在来線のみならず、今朝はあらゆる列車が遅延している。なぜ遅延したのかの理由は説明されない。多数の乗客がモニタを見上げ、立ったまま入線ホームの表示を待っていた。

レンヌ駅は大工事中だが、モニタの前はほぼ野外で立っていると足元から冷えてくる。10分遅れとなっていたので、9時10分には出発するのかと思えば、9時10分直前に「20分遅れ」の表示。9時20分の前に「40分遅れ」の表示。こんな具合にずるずると遅延が表示されるというひどいシステムのせいで、立ちっ放しで寒さに震えながらひたすら待たされれるはめになった。60分遅れ、70分遅れとなったときには寒さに耐えられず、かなり離れた場所にある待合室に避難しに行った。待合室に到着すると待合室のモニタに「75分遅れ」とともにようやく到着番線が表示され、またスーツケースを転がしてホーム方面に戻る。

10時15分、予定より75分遅れでようやく出発。走っている途中でも、なぞの長時間停車があって、結局、カーンに着いたのは予定より2時間遅れの1時45分だった。在来線車両は、ニースよりもはるかに清潔で落書きもない。空いていたので、スーツケースも座席にどかっと置くことができた。

宿泊先の受付は、1時から3時まで昼休みなので、すぐに行ってもしかたない。駅前で昼ご飯を食べることにした。
「本日のおすすめ」がアシ・パルマンティエ9ユーロとなっていた店に入った。アシ・パルマンティエは仏作文の教科書に出てきた料理だが、食べたことがなかった。高級レストランではおそらくメニューにないと思う。レストランというより家庭で作る大衆的料理だと思う。マッシュポテトで牛ひき肉を包んだもの、衣なしのコロッケみたいな料理だ。日本の肉じゃがみたいな位置づけの料理だと思う。
がっつりしたボリュームで出てきた。味はまあまあおいしい。感動するほどうまいというわけではないが。殺風景な場末の駅前レストランだったけれど、店員の対応は感じがよかった。


宿泊先は駅から2キロほど離れていたので、タクシーを利用することにした。駅のタクシー乗り場から乗ったのだが、このタクシーの運転手が感じがいい。運転も丁寧だ。レンヌでも空港からホテルまでのタクシーの運転手は感じがよかった。ニースやパリのタクシーも必ずしも運転手の感じが悪い、運転が荒いということはないのだけれど、ブルターニュ、そして今回はじめてきたカーンのサービス業の人たちの対応は、なんとなくニースやパリよりも安心できるような雰囲気がある。人のあたりが柔らかいというか。町全体の空気が穏やかに思われる。気のせいかも知れないが。


カーンのホテルはホテルというよりは、研修用宿泊センターのようなところだった。台所があり自炊ができる。部屋は広くて清潔。この宿泊先もあたりだ。宿泊料も50ユーロと安い。場所はカーンの中心地からちょっと外れたところにあるが、15分ほど歩けば中心地だ。カーンについては何の予備学習もしなかった。1066年にイングランド王になったノルマン人末裔、ノルマンディ公ウィリアム(フランス語ではギヨーム)ゆかりの地であり、彼にかかわる史跡が多数あることを知る。へースティングズの戦いの様子を描いた有名なバイユー・タピスリーが展示されているバイユーの町は、カーンのすぐ隣だ。これは見に行かなくてはならない。ノルマン・コンクェストは、英語とフランス語の関係においても重要な事件だ。また第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦とも関わる。見るべきものは多い町であることを到着してから知る。


夕方会う約束をしていた竹中香子さんから、列車を乗り間違えたため、到着が遅れるという連絡があった。6時半に会って、一時間ほどインタビューしたあと、一緒に食事のつもりだったが、7時半に会ってそのまま食事をしながらインタビューすることにした。竹中さんに会うまでのあいだ、散歩して時間をつぶそうと思ったのだが、今日はとても寒い日で散歩を楽しめるような気温ではなかった。竹中さんの泊まるホテルの前にモノプリがあったので、そこで時間をつぶす。

ガイドブックの『ルタール』で食事を取る店の候補をいくつか調べていたが、寒かったのでホテルの近くの適当な店に入ることにした。グーグルマップで「食事」検索して出てきた店のなかで、一番近くにある店に入った。Mooky'sという店だ。
https://www.tripadvisor.fr/Restaurant_Review-g187182-d7612190-Reviews-Mooky_s-Caen_Calvados_Basse_Normandie_Normandy.html

店はけっこう混んでいたが、予約なしでも入ることができた。メニューを渡されたが、飲み物とハムやチーズの盛り合わせみたいなものしかない。
「あれ?ここレストランだと思ったけれど、バーなのかな?」
と思ったが、いろいろなハムが入っているらしいハムの盛り合わせプレートと飲み物を頼んだ。
しかし食事に来たのに前菜と飲み物だけというのは物足りない。店員に食べ物のメニューはないのかと聞くと、
「食べ物は全部黒板に書いてある。でもとりあえず前菜見てから決めな」
といったことを言う。

そしてハムの盛り合わせが来た。そのボリュームに驚愕。
「すげえ。うそみたいだ」
とか言っていると店員が「でしょ!だからこれを見てから注文したほうがいいって言ったのよ」と。ノルマンディおそるべしである。
このハム盛り合わせとパンでおなか一杯になってしまった。料理を頼まなくてよかった。

竹中さんとはハムをむしゃむしゃ食いながら、昨年秋からツアーで上演を続けている作品のクリエーションの話や学校卒業してプロになったことで何が変わったか、など話を聞いた。
明日の夜、私は作品を見る。そのあとで感想をまた話す機会を設けることにした。

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