2024年3月5日火曜日

2024/03/04 パリ第3日目

 パリの四泊五日は徹底的にベタな観光をするつもりだったが、このためにはけっこうな下準備が必要なことがパリに到着してからわかった。私が最後にパリに滞在したのが2020年3月、新型コロナ禍で強制的引きこもりがはじまる直前だ。その前の滞在が2019年12月に二週間弱。パリにはトータルで2年半の留学経験もあるし、パリの観光についても一通りは経験しているつもりだった。ただ観光といっても、基本、学術的調査を伴うものだったので、いわゆる定番的観光地に行くことはなかった。

今回はパリ、フランスがはじめてという学生がほとんどなので、凱旋門、エッフェル塔、ルーブル美術館、ヴェルサイユ宮殿といった定番中の定番は実質三日間の観光のなかで外すことはできないだろうと思っていた。オルセー美術館やモンマルトル付近も案内したいところだったが、時間がない。

しかし今ではこうした超メジャー級の観光ポイントは事前予約がほぼ必須となっていた。しかもその予約のやりかたがけっこう面倒くさいのだ。ルーブル美術館は月曜の午前中に行きたかったのだが、入場時間がチケットごとに決まっていて、今日の午前中の入場チケットは取れなくなっていた。そこでしかたなく13時30分のチケットを各自予約するよう学生たちには伝えておいた。明日行く予定のベルサイユ宮殿も城館への午前中入館のチケットは既に売り切れで午後からのチケットしか購入できないことが昨日判明し、学生たちに明日12時半のチケットを各自予約するように伝えておいた。ルーヴル美術館のチケットはみんな予約できていたようなので、ヴェルサイユも各自問題無く予約できているだろうと私は思ったのだ。今日の午前中に行く予定だった凱旋門もパリ・ミュージアム・パスを購入していない者は日時指定チケットを予約する必要がある。そのことも昨夜、LINEで伝えておいた。ただ昨夜の時点で凱旋門のチケットも正午以降のものしか購入できなくなっていたので、今日の午前中はヴォージュ広場とマレ地区の散策をして、マレ地区で軽食を取ってから、午後にルーヴル美術館に向かう予定を考えていた。

朝の集合時間は9時半にしていた。凱旋門は諦めるとして、明日のヴェルサイユの予約はしておかないとヴェルサイユ宮殿を見ることなく日本に帰ることになる。私は学生たちが昨夜のうちにヴェルサイユ宮殿のチケット予約をしていると思ったのだが、実際には誰もしていなかった。集合場所にそろってから明日の午後のヴェルサイユ宮殿のチケット予約をスマホで一斉にはじめたのだが、ヴェルサイユの予約システムがルーヴル美術館とは異なるもので、しかもさらにややこしい。チケット予約できない学生が続出した。

ヴェルサイユ宮殿の予約システムは無駄にややこしいものだが、それにしても予約ページの英語仏語でのindicationをちゃんと理解できていない学生がけっこういたのは、正直、衝撃だった。確かにこの手のindicationはいくつかの知識を前提としてた慣例的な書き方がされているので、慣れないと意味がよくわからないところがあるのは確かではあるが。こういった実用的なことがらについてのリテラシーは、学校の語学の授業でもちゃんと教えておいたほうがいいなと思った。

結局私が何人分かの学生の予約を代理で行うことになった。今月、来月とカードの請求額が怖い。ホテル代の支払いもあるので、確実に設定している利用限度額をオーバーしている。まあしかたない。

全員分のヴェルサイユ宮殿の入場予約を確認してから、メトロに乗ってまずマレ地区のヴォージュ広場に向かった。午前11時前に到着。18世紀までは王宮広場と呼ばれたこの四角形の広場は、かつての貴族の館に囲まれている。その館の一階部分が柱廊形式になっている。『ノートルダムのせむし男』や『レ・ミゼラブル』の作者のヴィクトル・ユーゴーの家がこのすぐそばにあり、フランス革命がはじまったバスティーユ広場もすぐ近く、また付近はマレ地区とよばれるユダヤ人地区でシックでお洒落なブティックなどが多い、という説明をざっくりした。マレ地区を散策し、適当に飯を食べてから、2時間後の13時にまたヴォージュ広場に再集合して、一緒にルーヴル美術館に向かう、とした。

私はヴォージュ広場でちょっと休憩したあと、柱廊をぐるっと回って、さらに近くにあるユダヤ料理の店でファラフェルというひよこ豆のコロッケの定食を食べた。それからまたヴォージュ広場に戻ってきたのだが、学生たちはマレ地区で暇をつぶす術がなかったみたいだ。パリのお洒落地区の一つだし、いろいろ店を見て回ったりしているのかと思ったのだが。ルーヴル美術館の近くに着いたので、ヴォージュには戻らずそのまま時間になればルーヴルに行きたいというので、そうすることにした。

私たちが予約したルーヴルの入場時間は13時半だった。13時半ちょっと前にルーヴル美術館入り口に着くと、入場を待つ長大な列ができている。どの列が13時半のチケットを予約した人で、どの列が予約なしでルーヴルに直接来た人の列なのかよくわからない。おそらく予約なしで直接ルーヴルにやってきた人も多数いるだろう。13時半予約者用の列に並んだが、これでは実際の入場はいつになるのだろうか?と思っていたのが、時間になると案外するすると入場できた。13時40分頃には入場できたと思う。この行列のところで女子学生たちとも会うことができた。美術館入場後はそれぞれ自由に好きなところから好きなように見るということにした。

超有名な作品を見回るだけでも、広大なだけに2時間ぐらいは必要になるようだ。私は最初は混雑必至のモナリザのあるドゥノン翼は避け、それとは反対側のリシュリュー翼にあるベルギー、ドイツ、オランダの16-19世紀の画家とフランスの画家の部屋を見た。私が好きなルーカス・クラナハの《ヴィーナス》が見られて満足する。ひととおりリシュリュー翼の絵画を見てから、ドゥノン翼に移動。モナリザも見に行った。あとピコの《アモルとプシュケ》などギリシア・ローマ神話主題の絵やマンテーニャの《聖セバスチャン殉教図》など。

結局、ルーヴルには3時間ほどいたのだが、ぐったりと疲れてしまった。ルーヴル美術館を見に行く人はみんな疲れている。あの膨大すぎる量と広大な空間、そして作品の密度にやられてしまう。

美術館出口で女子グループの一部と再会する。彼女たちと凱旋門とシャンゼリゼ通りを見た後、別れ、パリ北部の郊外のジュヌヴィリエにある劇場に向かった。この劇場で今日までやっている一人芝居が非常に評判になっているとパリ在住の友人に聞いて、見に行こうと思ったのだ。ただしチケットはすでに売り切れで、上演1時間前にキャンセル待ちリストの登録を行うとあった。郊外のちょっと不便な場所にある劇場だし、行けばなんとかなるんじゃないかと思った。

劇場の近くのケバブ屋でまず夕食。ケバブプレートを頼んだが、凶悪な量だった。全部食べてしまったが。やはりケバブ屋が密集するパリの北部、東部の移民が多い地域のケバブはクオリティが高い。ケバブでお腹いっぱいになりすぎてちょっと気持が悪くなった。

上演の80分ほど前に劇場に行き、キャンセル待ちリストの登録を行ったのだが、なんとその時点で私は30番目だった。開演予定時間の20時半頃にカウンター付近にまた来てくれとのこと。ここに限らず、フランスの劇場のスタッフは、どこでもとても感じがいい。またこの劇場の一階ホールには広々としたカフェが併設されていて、開演を待つ人たちで賑わうこのカフェの雰囲気もいい。どちらかというととんがった芝居だが、郊外の公共劇場で意欲的なプログラムが組まれ、その劇場がこうした居心地のいい空間であるところにフランスの劇場文化の豊かさを感じてしまう。観客も若者が多い。

さてキャンセル待ちだが、残念ながら私のところまでは回ってこなかった。そのまま宿舎に帰ることにした。食べ過ぎでお腹の調子が悪く、ルーヴルで疲れ切っていたので、見られなくてかえってよかったかもしれない。もしチケットが手に入ったとしても、観劇に集中できるような感じではなかっただろう。










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