2014年7月5日土曜日

講演+上映会『はちみつ色のユン』の背景 ご来場頂きありがとうございました。


講演+上映会、無事終了しました。

 開始時間が遅いし、小雨模様だったので、何人来て頂けるか不安だったのですが、ざっと見て70名くらいの方に「はちみつ色のユン」を見て頂けたように思います。
足を運んでくれた方々、上映会の情報を拡散して頂いた方々に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 実は昨日、あの教室で器材のチェックをしているときに、一人で「はちみつ色のユン」を通して見てしまいました。今日見るので、最初の部分だけ確認すればいいと思っていたのですが、見始めると途中でやめることができず。2月に六本木シネマートで見て以来、私にとって二回目の「はちみつ色のユン」でしたが、作品のクオリティの高さについては確信できました。極めて悲痛で深刻な主題なのだけれど、作品の間口は広いので見てもらえれば、大半の方はきっと満足されるに違いないと思いました。

 昨日に続き三度目の鑑賞となった今日も、見ていてやはり胸締め付けられる思いでした。自分自身の存在を受け入れ、さらに周囲の人間を受け入れるまでに、あれほど自分を苛み、傷つけなければならないなんて。

 原作者であり監督でもあるユンはこの作品を作るにあたって、また過去の自分の苦く、つらい記憶をたどり、直視することになります。はちみつ色がかかったノスタルジック、抒情的、牧歌的な情景と抑制され、ドライな印象の演出が、物語内容の悲痛さ、ユンの痛々しさと結び付き、澄み切った緊張感を生み出しています。はちみつ色の肌ゆえに意識せざるを得なかった自分の存在の異物性、疎外感。それをもてあまし、苦悩し、自らを追い詰めることで、ようやくはちみつ色の肌である自分をそのものとして受け入れることができたのは、ユンが私小説的バンドデシネを書き終えたあとだったのかも知れません。
ユンの姿には、私たちが抱える自己存在についての問いかけ、孤独感、不安感が、先鋭的なかたちで集約されているように感じました。

 エンディングで流れるのはユンの娘であるLittle Cometが歌う《Roots》という曲です。この曲は彼女が13歳のときに作詞作曲し、16歳のときにスタジオ録音したものだそうです。思春期の娘は、すでに母親のように、父親であるユンの哀しみを理解し、このうたによって慰めていることにも心動かされました。

 DVDの国内販売がないということで、早稲田大学文学学術院フランス語フランス文学コースのご協力を頂き、自主上映会というかたちでこの作品を上映し、学生のみならず、いろいろなバックグラウンドの方々と、作品を共有できて本当によかったと思いました。
最後にあらためて、ご入場頂いた方々にお礼を申し上げます。

2014年7月4日
片山幹生

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