2026年2月19日(木)第5日
今日は夜にニース近郊の海岸沿いにあるTable de Kamiyaで夕食を取る以外は予定のない日だった。
今週は3クラスが開講されているのだが、私が連れてきた学生は一人を除き、下のレベルの2クラスに振り分けられている。下のクラスにいる学生が一つ上のクラスに移動したいというので、担当のニコラと相談する。一番上、A2+レベルのクラスに一人学生を送っているが、その学生は難しすぎるので来週は下のクラスに移動したいと言う。
今週はなまじ全体の受講者数が少なく、しかもそのマジョリティは我々日本人学生、そして日本人学生のあいだでもかなりフランス語力にはばらつきがあるので、しっくりいかないところがある。それぞれの個人のフランス語力にぴったりと適合する授業はあり得ないので、どこかで妥協点を学生も探らなくてはならないが、その加減を見極めるのは難しいだろう。3クラスだけということで、授業開始後のクラス移動は比較的フレキシブルに行われているが、ニコラ曰く、移動先の先生への気づかいなどもあってデリケートなところもあるらしい。教室の収容人数やクラスの受講者数のバランスもある。
今週は本来の教務主任のアントニオが休暇を取っているので、副主任にあたるニコラが自分も授業を担当するかたわら、こうした調整役もやっている。Azurlinguaの授業は一週間で一ユニット完結で、一週間ごとに学生は入れ替わる。今週で終わりもいれば、来週も引き続きという学生もいる。来週になると新たな受講生が入ってきて、クラスも再編されるだろう。
学生のクラス変更に立ち会ったあと、家に戻る。家で11月から始めている韓国語の勉強をしようと思っていたのだが、「よしこれから韓国語をやるぞ」とやる気になったところで、学校で授業を受けている学生から電話が入った。男子学生一人がめまいで倒れたとのこと。すぐに学校に向かう。滞在先から学校までが5分ほどというのはありがたい。
めまいで倒れた学生は、ひとり、空き教室で休んでいた。昨夜から吐き気と寒気があったという。嘔吐は昨夜一回した。授業で教室の外での活動となったときに、めまいがして立てなくなったということだった。ニースに来る一週間前に、家族でハワイ旅行に行き、その帰りの飛行機でも同じようなことがあり、二回目ということで不安も大きいようだった。
2023年に学校の近くに一週間毎日、昼休みなしのノンストップで開業しているDoc Med 7/7という医療機関ができていたことを、昨年の研修で知っていたので、そこに連れて行くことにする。通常はフランスで病院に連れて行く場合は、予約が必要だが、ここは予約が必要ないと聞いていた。これまでは土日以外、昼間の時間帯は、学校から20分ほど歩いたところにある女性の個人開業医に連れて行っていた。そして土日に学生が調子が悪くなった場合は、トラムの終点にある大学病院、パストゥール病院の救急外来に行くしかなかった。2023年夏に、連れて行った学生の一人が発熱したときは、パストゥール病院に連れて行った。検査したら彼は新型コロナに感染していたのだったが。
Doc Med 7/7に学生を連れて行くのはこれが初めてだが、学校のすぐ側で、予約なしというのはありがたい。フランスの個人開業院は、集合住宅の一室で、看板もなく、外からはクリニックだとはわからないところが多いのだが、Doc Med 7/7は複数の医師がいて、外側からもクリニックというのがわかるようになっていた。入ると子供連れなど10名ぐらいの患者が待合室にいた。入ると、まず大型タッチパネルで受診登録をしなくてはならない。これはフランス語ができないとかなりハードルが高いはずだ。受診登録が終わるとチケットが出てきて、その番号で呼び出される。1時間半ほど待つことになった。
私の学生を診断したのは30代くらいの若い医師だった。私はフランスでは入院経験があり、複数の病院で診察を受けたことがある。またニースの研修ではこれまで体調を崩した学生を何人も病院まで付き添って行ったことがある。フランスの医療については、フランス在住者がその医療システムや医者の能力について否定的に語るのをネットで見たり、あるいは聞いたりしたことはあるが、私の経験の範囲では、フランスの医師はおおむね親切で感じのいい人が多く、問診も日本の医師より丁寧に行う。
ただいわゆるクリニックでは、問診が中心で、あとは血圧や体温を測るぐらいのことしかしない。採血などの検査が必要と判断した場合は、医師が「検査リクエスト票」を作成し、それを持って、1キロ四方に一つぐらいの割合である医療ラボ(検査場)に患者が赴き、そこで検査を受け、その検査結果を持ってまた医師の診察を受けるというプロセスになる。その検査結果を見て問題があると医師が判断すれば、その医師は専門医への紹介状を書くというシステムだ。病院と検査場の行き来が必要だが、一般医、検査場、専門医の分業が明確で、合理的なシステムだと思う。
聞いた話で、実際に私が医療を受けたわけではないが、病院はあるものの、実際に受診するまでのハードルが高いカナダや英米の医療に比べると、すぐに診察を受けることができるフランスのシステムは優れているように思うし、あくまで私が経験した範囲ではあるが、医師の専門性、誠意、応対も日本の平均的な医師よりも優れているように思う。
Doc Med 7/7の医師もこの私の認識を裏切らなかった。こちらの症状説明を丁寧に聞き、問診を行った結果、疲労と緊張が原因ではないか、喉が少し赤くなっているが、特に重大だとは思われない。一応Laboへの検査依頼書を出すので採血をして欲しいということだった。薬は吐き気止めと解熱剤を処方された。解熱剤はアセトアミノフェン(パラセタモール)で、日本ではカロナールという商品名で売られているものだ。しかしフランスでは効き目がはっきりしない薬は好まれないので、成分は日本の製品の2倍か3倍詰め込まれている。実によく効く。とりあえず対処療法で、吐き気がしんどければ吐き気止めを、熱がしんどければ、パラセタモールを飲んで、安静にしておけ。来週には回復するだろうという話だった。
診察料は70ユーロ。日本円の今のレートで13000円くらいか。日本だと保険で3割負担なので4000円弱となる。円安もあるが、医療費自体はそんなに変わらないかもしれない。ただ解熱剤のようなごく一般的な薬品代は、5日分で7ユーロ(1300円くらい)だったので、日本より安いと思う。
病気の学生の滞在先も数百メートルのところだった。明日朝のラボには付き添うことにする。その学生は夜にTable de Kamiyaのディナーに参加予定だったが、この体調不良のため、キャンセルとなった。まあしかたない。
昼飯は駅の近くでフォーを食べた。お腹は空いていたが、夜はKamiyaでの食事なので、軽めにすませたかったのだ。軽めの食事で美味しかったけど、フォーで2500円ぐらいする。円換算しては何も食べられない。家に帰って韓国語の勉強を始めようと思ったが、眠たくなって2時間ほど寝てしまった。
Table de Kamiyaへの食事は7人の学生と一緒に行った。集合はニース駅に18時としたが、Kamiyaの最寄り駅であるCros de Cagnesに停車する列車は18時30分過ぎのものだった。Kamiyaには予約していた19時ちょっと前に到着する。19時オープンなので私たちが最初の客だった。
Kamiyaには昨年はじめて行った。通常、私はフランスにいるときは、とりわけ高価なフランス料理をレストランで食べるということはしないし、若い学生が高い飯を食べるのをあまり気分のいいものだとは思っていないのだけど、昨年はフランスでどうしてもフランス料理を食べたいという強いリクエストがあり、どうせ食べるのならちゃんとしたごちそう感があるフランス料理、ここでしか食べられないようなフランス料理がいいと思い、それ以前からインスタなどを見ていて、そのメッセージや料理に共感を抱いていた神谷さんのレストランに行くことにしたのだった。このTable de Kamiyaの体験は、昨年の日記に書いている。
https://kanjintecho.blogspot.com/2025/02/2025-022511.html
このTable de Kamiya体験があまりにも印象的だったので、昨年は、次の年ニースに来たときも必ず神谷さんの店に行こうと思っていたのだ。本当は学生全員を連れて行きたい気持ちはあるのだけど、高級フレンチではないとはいえ、値段はそこそこするし(定食が45ユーロ)、また20人近い団体であの店を占拠するような野蛮なことはやりたくなかった。もっともフランスではまともなレストランでは、大人数団体では食事は食べられない。食事をサーブするタイミングが難しかったり、また他の客への配慮もある。なので今回は私を入れて8名で行くことにした。
神谷さんの料理は、フランス料理をベースとしつつ、地元の食材を使い、アクセントとして和風の材料なども使っている。複雑で洗練されているけど、いわゆるフランス料理のような重さがない。フランス人には、少々軽すぎてものたりないという感じを持つ人もいるようだ。それでも競争の激しい南仏のリゾート地で、日本人ながらフランス料理店で勝負し、地元の人に高く支持されるレストランとなっている。
シェフの神谷さんが何度かテーブルまで来てくれた。最後には神谷さんを交えて集合写真も。今年もこの店に来られて本当によかったと思う。料理が美味しいだけでなく、料理に励まされるというか。
食事中はなにか話をしなくてはならない。一人一つずつなんか面白い話題を提供することとしていたが、私の話は学生たちには不興だったようだ。なかなか難しい。9時半ごろに店を出る。できるだけさっさと食べて9時前に店を出ようと思っていたのだが、なんのかんので時間は過ぎる。ニースに着いたのは午後10時半ごろだった。

















