2019年3月5日火曜日

2019/02/25 ニース研修2019春10日目


ニース研修10日目。
授業が2週目に入る。ほぼ毎日外出があり、日本にいる時よりはるかに長い距離を歩く日々が続いている上、慣れない外国生活ということで、学生たちにかなり疲れが見えてきた。
2週目のイベントは最初の週ほど多くはない。今日は午前中授業のあと、午後は学校主催の遠足でニースから列車で15分ほどの場所にあるボリュへの遠足があった。
学校のスタッフの引率がつくはずだったのだが、別のグループのホームステイでトラブルがありその対応をしなくてはならないということで、列車の切符とボーリュで訪問するヴィラ・ケリロスの団体予約表と入場料を渡されて、私が学生を連れて行くことになった。
学校主催の遠足は原則必ず参加することにしていたのだが、疲労で体調を崩した学生二人が遠足を休んだ。
ボリュは19世紀末のベルエポック期に発展した小さな海辺の町で、景観は美しいけれど特に街中に見るべき観光資源はない。しかし敢えてこの町に遠足に出かけるのは20世紀初頭に建てられた別荘建築の傑作、ヴィラ・ケリロスがあるからだ。紀元前4世紀のギリシア貴族の別荘の復元なのだが、それには莫大な金と再現に関わった考古学者と建築史学者の美学が詰め込まれている。
その内装のこだわり、細工の趣味の良さには誰もが驚嘆するだろう。私は五年前から毎年この別荘を訪れているが、来るたびにその壮麗で洗練された装飾に感嘆する。個人的にはコートダジュール観光ではこの別荘見学は外せないと思っている。
別荘見学のあとはまた列車乗ってニースに方面へ。疲れている学生が多かったのでパスしようかとも思ったのだが、希望者がいたのでボーリュの隣の駅のヴィルフランシュで途中下車した。半分の学生は途中下車せずそのままニースに帰った。
ヴィルフランシュは後ろに崖が迫る狭い海岸沿い作られた町だ。この町の旧市街の道には建物の下にトンネルのようになっているところがあるのが面白い。海岸もあり、風光明媚なので、夏のバカンス時期は賑わうが、今の季節はひっそりとしている。町を見下ろす要塞まで上ったあと、海岸沿いの通りまで降り、海に面したホテルのカフェでお茶を飲んだ。
ボリュとヴィルフランシュへの遠足は今回の研修では地味な企画だが、私はとても好きな場所だ。興奮と緊張が続く研修日程の中で、ホッとした気分になれる静かな場所だからだ。

ヴィルフランシュに立ち寄らずにニースに戻った学生の一人に到着早々に高熱を出して病院に連れて行った学生がいた。アスピリン大量投与で熱は下がったものの、咳がずっと残っていて、それがかなりしんどいとのこと。咳の薬も改めてこちらの薬局で購入して飲んでいるものの効果が見られないという。
その訴えを聞いたのが17時過ぎだったので、明日の午前に医者に連れて行くことにしていたのだが、19時まで開いている病院があるのでそこに一人で行ってみるという連絡がラインに入っていた。この子は英語がかなり話せるのでそれで一人で行ってもなんとかなると判断したのだろう。
一人で病院に行くというくらいしんどいのだったらヴィルフランシュには行かずに彼に付き添うべきだったと後悔したが、彼が向かう行った病院を調べてみると外科とある。咳の症状で外科に行っても仕方ない。これを見てますますいっしょに行くべきだったと思った。ニースに着いてから、彼が行くと知らせてきた病院に行ったが、そこは外科は外科でも美容外科だった。これでは咳で苦しんでいる奴が行っても仕方ない。ラインで学生に連絡を取ると家に戻っていた。彼の住んでいるところへ行って直接話しを聞くことにした。
近所の病院はグーグルマップで検索したら出てきたところに行ったとのこと。時間は18時を過ぎていたのでもう診察をしている病院はないだろう。とりあえず近所の薬局に行って、この時間に飛び込みで診察してくれる医者がいないか聞いてみることにした。彼は自分で薬局に行ってすでに咳用のトローチのようなものを貰ったけど効かなかったと言う。だから薬局に行っても仕方ないと思っていたようだった。
フランスには薬局はやたらある。薬局には緑十字の看板が掲げられているのでどこにあるのかすぐにわかるが、個人医院は日本のように看板が掲げられておらず、ひっそりとあることが多い。私はフランスで医者に行く必要があるときは、まず薬局に行って近所の医師の場所を聞くようにしている。
フランスは全般的にサービス業の勤労モラルが低いのだが、私の経験では劇場関係者、薬局の薬剤師、そして医師には不愉快な思いをさせられた経験がない。ふつうに親切だ。
今回飛び込んだ薬局薬剤師も親切で感じのいい人だった。症状と学生がこれまで飲んだ薬を確認すると、彼が飲んでいた薬はたん絡みの咳を抑えるものと喉の痛みを和らげるもので、乾いた咳には効果がないと言う。乾いた咳には定番ものの薬がありよく効くはずので、今晩、これを飲んで症状が変わらなければ、明日医者に行くのでいいのではないかと言う。その時には適切な医師を紹介するとのこと。困っている時に親切で丁寧な対応があるとホッとした気分になる。
ブラバン家の夕食は、羊肉にさまざまなスパイスをまぶしてオーブンで焼いたもの。料理の名前は知らない。白米とインゲン、煮込んだ大豆(?)と一緒に食べる。オーブンで焼いている時から美味しそうな匂いが漂っていた。これにマダガスカルの謎の激辛香辛料とマンゴーの薬味をつけて食べると、もう最高としか言えない。また食い過ぎた。ブラバン家の夕食はわたしには驚異である。来年の滞在もこの家を予約しておきたい。

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