13名の学生を連れてきたけれど、会話については同じようなレベルだろうということで、私たちのグループだけで一つのクラスを作ってもらった。昨年、一昨年は、最初の一時間ほどの授業で教師が個々の学生のレベルを見極めて、よくできる学生がいればその学生だけ違うクラスに変更するというやり方でやっていた。
二週間しかいないのに最初にレベル判別テストで時間をとってしまうのはもったいないので、このやり方が効率よかったのだ。今年も同じようにやってもらおうと思い、そういう風に伝えたら(メールでこのようにやって欲しいとリクエストは出していたのだけれど、伝わってなかった)、
「閉じたクラスで授業をやるように言われている。そういうやりかたをするのなら、教育プログラムの主任指示がないとできない」
という。神経質そうな女の先生だ。それで旧知の主任の先生のところに言って、昨年一昨年同様にやってくれと頼んだ。そうすると主任の先生がインタビューテストを後でするので、とりあえずその女の先生には授業を始めてもらってくれという指示が出た。
ところがそのあと、主任と女の先生のあいだでなんか議論があった挙句、女の先生がテストをやることに。結局、筆記と聞き取りとインタビューの本格的なテストと採点、評価で、今日の授業は終わってしまった。結論は「文法知識はかなりある子はいるかもしれないけれど、オラルの能力は全員低い、ほぼ同じレベルと言っていい。ただ一人二人は別の上のレベルのクラスが可能かも。それは明日、主任と相談する」ということに。
しっかりレベル判定テストをしたので、明日以降のプログラムは目標設定が明確になったかもしれないけれど、こちらとしては言わずもがなの結論(メールでこの件については事前に伝えていたのに)でやれやれという気分になった。
昼食は近くのカフェテリアで用意される。このカフェテリアの飯はボリュームがあって、そこそこおいしい。
午後は、遠足などのレクリエーション担当のエリックの引率で、ニース旧市街の散策とお菓子工場・販売店フロリアンの見学の遠足があった。私はニースで一番素晴らしいのは、パステルカラーの壁の建物のあいだの路地が作り出す旧市街の景観だと思う。昼間の旧市街もいいが、日が暮れたあと、オレンジの照明で照らされる旧市街の風情も大好きだ。
旧市街をひととおり廻ったあと、ニースの町を一望できる城山に上る。これまで私がニースに来たときは城山のエレベータが工事中で利用できなかったのだが、今回はエレベータで上ることができた。この時点でかなり歩き回って疲れていたので、エレベータはありがたかった。城山の頂上から一望できるニースの町のパノラマは、ニース絵葉書の定番風景の一つだ。私は来るたびに上っているのだが、毎回、このパノラマの見事さには感嘆してしまう。この城山の頂上から見おろす夜景も美しいと思うのだが、夜にこの城山に上るのはちょっと怖い。フランスの公園ぽいところは昼と夜でまったく表情が違ったりするので。昼はのどかで平穏な公園・広場が、夜はアル中や薬中っぽい若者たちのたまり場で怖い思いをしたことが何度かあった。ニースの城山公園はどうだか知らないけれど。
城山を降りて、ニース港の近くにあるお菓子工場・販売店フロリアンに行った。果物や花びらのシロップ漬けで有名な店だ。アトリエで代表的な菓子の作り方を解説付きで見学したあと、試食、そして販売という流れになる。ここの菓子は確かに天然素材だけを使って、丁寧に時間をかけて作られている。味も素晴らしい。でも当然、そこそこ高い。
http://www.confiserieflorian.com/
工場での製作工程を説明入りで見学して、味見なんかをすると、ついつい買ってみたくなり、過去の二回は私も購入したのだけれど、日本にお土産で持って帰ってもなかなかこの菓子のありがたみをわかってくれそうな人がいない。という私自身もこんな高級菓子を日本で買って食べることはまずないわけで。レモン皮の砂糖漬けとかやはりかなりおいしくて好きなのだが、こんな高価な菓子を買ってさらに太るのもなんかな、という気がして、今回は購入を見送った。お土産菓子もこんな気取ったものでなくて、スーパーで売っている板チョコでいいかなと。
夕食はステイ先ではなく、二年前の夏にニースに来た時に知り合った友人とインド料理屋に行った。二年前、夏の研修が終わった後、これでニースに来ることはもうないかもしれないと思い、ホテル(というか安民宿みたいなすごいところだった)に三泊した。ホテルの近くのレストランで一人で飯を食べていたときに、隣に座っていたフランス人夫婦と仲良くなり、その後、ニースに来るたびに彼らと食事を取っていた。昨年夏にニースに行った時も、娘と私、そしてその夫婦とその娘の5人で飯を食べた。ところがこの食事の半月後に、夫婦の夫のほうの不倫が発覚し、この夫婦は離婚してしまったのだ。この夫は美容師で地元で美容院を経営していたのだが、同じ店で働く美容師(子供二人あり)と昨年春ごろから不倫関係にあったのだと言う。地元美容院ということで、生活と仕事の場が近いこともあって、この不倫関係の関係者、友人たちはみな知り合いというちょっと地獄っぽい感じだ。
不倫が発覚して、おそらく相当激しい修羅場があって、すぐに離婚となったわけだが、夏に一緒に食事をしたときはそういった雰囲気はみじんもなかったので、私はとても驚いた。エキセントリックで個性的な妻を、ハンサムで温厚な夫が面白がっているという雰囲気の夫婦だった。夫は今は不倫の相手と一緒に暮らしているそうだ。地元に根付いた美容院なので、不倫発覚というスキャンダルでも店をたたむわけにはいかない。美容院はもちろんまだ健在だ。女性は離婚していたそうなので、たぶんニース市内の彼女の家に今は一緒に住んでいるのだろう。
二人の娘は14歳だ。こうした離婚の場合、日本だとほとんどの場合は、妻が子供と暮らすことになると思うのだが、フランスではそうはならない。子供は週に二日は妻のもとで暮らし、のこりの五日は夫のところで暮らす。行ったり来たりで落ち着かないように思うが、こうした家庭はかなり多いようなので、そういうものだとして子供も受け入れるのだろう。
私が今夜会ったのは妻のほうだった。待ち合わせ場所で会うとまず「今夜は私のボーイフレンドも一緒に食事するから」と言う。彼女にボーイフレンド、恋人ができたという話は聞いていなかった。昨年の11月からフェイスブックの共通の友達を介して知り合い、付き合い始めたらしい。前の夫にこのことは絶対言わないで欲しいと約束させられる。離婚はしたのだけれど、法的にはまだ決着がついていない部分があるらしい。相手に自分の状況を知られたくないからということだった。
彼女の恋人は10分ほど遅れて車でやってきた。不動産会社勤務のハンサムな人だった。「前の夫に似てるって言う人がいるんだけど、どう思う?」と聞かれた。そういわれれば確かに雰囲気はちょっと似ている。顔だちも。
駅の近くのインド料理屋に行き、三人で食事を取りながら、不倫発覚後の修羅場から、新しい恋人との出会いまでの経緯を聞く。新しい恋人には二人の子供がいるそうだが、この二人も週に二日は彼の家で、残りは元妻の家で過ごすとのこと。
この恋人の存在は、彼女の元夫は知られたくないわけだが、彼女の娘にもまだ伝えていないそうだ。娘に恋人のことを言うと、当然、元夫にも伝わってしまうわけで、それで秘密ということなのだが、こういう重要なことを娘に話せないというのも苦しいところだと思う。ただ来週からこの二人は三週間の休暇を取って、キューバで過ごすらしい。そうなると新しい恋人の存在は言わなくてもバレバレになってしまうと思うのだが、もうそれはそれで構わない、二人の燃え上がった気持ちを優先させるということなのだろう。
彼女の新しい彼氏は悪い人ではなさそうではあったが、私にとっては興味深いと同時にちょっと居心地が悪い食事でもあった。二人の関係も三か月前に始まったばかりということもあり、まだ不安定というかお互いに様子を探っている感じでもあった。
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