2020年2月17日月曜日

2020/02/16 ニース研修第2日

昨夜は11時に就寝し、朝6時頃に目が覚める。トイレに行ったあと、午前7時までまた寝た。日本からフランスに行くときには時差ボケはほとんど問題ならない。到着初日がちょっと眠たくてしんどいだけで、翌日からは普通に生活できる。時差ボケが問題になるは私の場合はフランスから帰国した後だ。

今日は日曜日で学校はまだ始まっていない。昨年に引き続き、私個人の企画でニースを起点とするローカル私鉄、プロヴァンス鉄道でニースの北西にある要塞村、アントルヴォーに行くことにした。この村はかつてはサヴォア公国とフランス王国の境界にある軍事的要衝で、17世紀にフランス各地に見事な要塞を残している築城家ヴォーヴァンが砦を築き、村全体を要塞化した。
SNCFのニース駅の北500メートルほどのところに、プロヴァンス鉄道のニース駅、Nice CP駅がある。フランスでは珍しいこのローカル私鉄については、以下のブログで詳しく記されている。
https://homipage.cocolog-nifty.com/map/2018/04/i-81b0.html

集合場所をNice CP駅としたのだけれど、昨日ニースに着いたばかりで土地勘のない学生たちにとってはここまでやってくるのはけっこう大変なことのようだ。昨年は一組の学生が道に迷って出発時間までに駅にたどり着くことができなかった。今年も若干懸念があったのだが、全員出発前に駅に集合することができた。
アントルヴォーまではニースから90分ほどかかる。週末しかアントルヴォーに行く列車は運行しておらず、一日数本しかない。
昨年は工事中区間があるということで、途中から鉄道会社の代替バスでアントルヴォーに行った。今年は特にウェブページには代替バスの情報はなかったので、全線鉄道でアントルヴォーまで行けると思っていたのだが、やはりニースから30分ほど行った地点から代替バスだった。代替バスは鉄道の線路にほぼ並行して、川のそばの谷間の道路を走るのだが、この道路がかなり曲がりくねっている。そこをかなりの猛スピードの乱暴な運転で走るので、学生たちの多くは乗り物酔いの状態になってしまった。私はあまり車酔いはしないほうなのだけど、今回はちょっと気分が悪くなった。

9時25分にニースCP駅を出て、アントルヴォーに着いたのが11時前だった。アントルヴォーの村は前方は川に区切られ、後方は急勾配の山で遮られている。後方の山の頂上には砦が築かれていて、そこにはジグザグの石畳の道が伸びている。建築は17世紀のものだ。村のなかでは、斜面に密集して5−6階建ての古い石造りの建物がぎっしり並んでいて、実に絵画的、インスタ映えする風情のある景観を形作っている。

観光地・リゾート地である海岸から離れているためか、このピトレスクで独特の景観にも関わらず観光客は多くない。日曜日には商店やレストラン、観光案内所も休みでひっそりとしていて、観光へのやる気も余り感じられない。

まず村をみおろす山頂にある砦に昇ることにした。石畳のジグザグ道を昇るのはかなり大変で、汗だくになった。砦までは20分ぐらいかかった。砦からの見晴らしは素晴らしい。観光資源としてはかなりのものだと思うのだけど、砦の内部はあまり整備されておらず、落書きだらけの廃墟と化していた。第一次世界大戦中はこの砦が捕虜となったドイツ人軍人の監獄として使われていたそうだ。

観光案内所が開いていれば、川に沿って村を取り囲む城壁を見学できたのだが、日曜で観光案内所は休みだ。城壁内には通路があって村の歴史を再現した興味深い展示があるのだが。砦に上ってしまうと、あとはぶらぶら歩いても一時間ぐらいで回れる村を散策するぐらいしかすることがない。帰りのバスが4時19分なので、3時間半以上をつぶさなくてはならない。昼飯をどこで食うのかがまたちょっとやっかいだ。
昨年は村内の数軒あるレストランで開いているのがクレープ屋一軒だけだった。クレープ屋といっても日本のものとはちがって、そば粉を使ったガレットを出すレストランだ。そのクレープ屋はグループ全員を収容できなかったので、2交代で店に入って食事をしたのだった。
https://thumbnails-photos.amazon.co.jp/v1/thumbnail/v0XBAp09QeGlendwJfbIgA?viewBox=642%2C642&ownerId=AD47RRPX0CEHO

今回はクレープ屋以外にアントルヴォーの郷土料理のセッカを出す店が開いていた。セッカとは牛肉の生ハムみたいなものだ。郷土料理の店に「19名入れるか?」と聞くと、「19名? その人数だと予約してもらわないと」という返事だった。そこでグループを2つにわけて、6名がもう一人の引率者のKさんとクレープ屋に行き、残りの私を含めた13名が郷土料理屋になった。フランスのレストランは大人数で押しかけられるのを好まない店が少なくない。というかこれまで「その人数ではねえ」と断わられたりすることが何回かあった。13名だと嫌がられるかなと思ったが、OKという返事なので、郷土料理屋に入った。実はもう2軒開いているレストランがあったので、そこに何人か流れないかなと思ったのだけれど、他の店に行くという人はいなかった。レストランに入って、食事を注文するというごく普通のことが、フランス語がわからないと案外ハードルが高いのだ。13人分の注文をまとめて、伝えるのは、面倒だなあ、と内心思ったのだけれど、仕方ない。

店のメニューはバラエティに富んでいたが、結局全員が店の主人の勧めにしたがって郷土料理のセッカを中心とした盛り合わせ定食みたいなものを頼むことになった。大皿の上にセッカのほか、サラダと他の数種のおかずが乘っている料理だ。幕の内弁当みたいにバラエティに富んでいて、見栄えがよくて、ボリュームがある。

セッカは前に娘とアントルヴォーに来たときに食べたことがあったが、こんなにまとまった量を食べたのは初めてだった。豚肉の生ハムに似ているけど、臭みはセッカのほうが強い。慣れの問題かもしれないが。この独自の臭みゆえに、牛肉のハム、ソーセージ類というのはあまりないのかもしれない。しかしまずいわけではない。かなり美味しい。郷土料理っぽい珍しいものを食べることができて私は大いに満足した。

食事のあとは学生たちから離れ、石造りの村の路地をぶらぶら散歩した。村の端にある17世紀のバロック様式の教会にも行った。今日は日曜だから、むしろ午前中はこの教会のミサに出てもよかったのだ。どれくらいの人たちがミサに参加しているのだろう。小さな村の教会だが、18世紀終わり、革命期までは司教座聖堂だったと教会の説明文にあった。

帰りはアントルヴォーから鉄道の代替バスでニース近郊まで行き、そこから鉄道でニース市内に戻る。昨年はアントルヴォーに代替バスが着いた時点で、私たちのグループ全員を乗せることができなかった。次の代替バスは2時間以上先なので、私たちのグループを乗せるための追加バスを呼び寄せることをその場で鉄道会社のスタッフに要求した。それで私たちは追加バスで帰ることができたのだった。

今年もそんなことがあるのではと懸念していたのだが、なんとかぎりぎり私たちグループ全員がバスに乗ることができた。しかしそこから先の停留所で待っていたフランス人乗客は座席がもうないという理由で乗車拒否をされていた。
鉄道会社の見積もりが甘いからこういう積み残しができたわけで、乗車拒否はひどい話だ。乗り込もうとしていた人は文句を言っていたが、運転手は「どうしようもないから。しかたないだろ」とか言って、バスを発車させた。この運転手のひどい対応にも驚いたが、停留所で待っていたフランス人(おそらくだが)乗客があっさりあきらめたにも驚いた。なんで粘らないんだ? こんなところで置いてけぼりでいいのかい?

アントルヴォーはかなりの遠出になるので、やるなら研修の最初のほうにやるしかない。二週目になるとみんな疲れて遠出を厭うようになるからだ。しかし南仏での研修で私が何を見せたいとなると、普通の観光旅行ではまず行くことのないアントルヴォーだ。その独特の景観はわざわざ足を運んで見る価値がある。
また昨年そうだったのだが、授業が始まる前にこうした遠足で交流の機会を作ることはその後の研修の雰囲気づくりの上でいい結果をもたらす。今回もお互い知らない者同士の学生たちの距離が遠足でちょっと縮まったように見えた。

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