研修一週目は午後や週末の遠足等の行事をきちきちに詰め込んだが、二週目は緩やかなスケジュールにしている。今日は午前中はいつもどおり授業、午後はニース市内になるニース現代美術館に行った。これは学校主催の企画だ。学校主催の企画のときは学校のアクティビティ担当者が同行するのが原則だが、今日はニース市内で歩いていけるところで、私は毎年行っている場所なので、私が学校から美術館に見せる必要な書類をもらって引率することになった。
「Azurlinguaから来た。予約済みだと口頭で言えば、それで入れるはず」と言われたが、実際には美術館窓口の人は愛想が悪くて、学校から預かってきた書類を見せても「合計で学生が何人で、引率が何人か?」「ちゃんと予約してきたのか?」などと難癖をつけてくる。なんとなくだがフランスの公立美術館のスタッフというのは感じのいい人が少ないように思う。フランスではサービス業は全般にスタッフの態度がよくないところが多いのだけれど、業種によって感じのいいとこと悪いところがかなりはっきり分かれている感じする。公立劇場のスタッフ、薬局の薬剤師、医者は私の経験では、嫌な思いをすることはあまりない。あとケバブやクスクスなどのエスニック系大衆料理の店の人たちも。私がこの手の料理が好きなのは、そこで働いている人が相対的に感じがいいというのもあるかもしれない。逆に不愉快な思いをすることがちょくちょくあるのが、美術館の窓口、SNCFやメトロなどの公共交通機関の窓口、郵便局窓口など。パリやアヴィニョンの観光客向けのレストランやカフェの店員にもいやな思いをしたことは度々ある。ニースなど南仏のレストランやカフェではあまりない。
北部イタリアのコロナウイルス感染者のこともずっと頭にある。昨夜テレビのニュースを見ると、この問題についてはかなり詳しく報道していた。隣国で大量感染者ということで一気に緊張感が高まった感じだ。ニースはイタリア国境と近い町なので、イタリアとの往来は盛んだ。フランス人の多くは「フランスでも感染者がいないはずがない」と思っているだろう。
ニース現代美術館の目玉はこの町出身で、青色のモノクローム絵画で知られるイブ・クラインの作品なのだが、残念ながら今はイブ・クラインの展示室が工事のため閉鎖されていて、見ることができなかった。青色一色がべたっと塗っているだけの作品だが、現代美術館の白い壁面にゆったりとした間隔で展示されているイブ・クラインの「青」は、現代美術にそれほど関心のない者でもハッとさせるような鮮烈さ、そしてひきこまれてしまうような深さを感じさせるものだ。それこそ見せたかったものなのだけれど、仕方ない。現代美術館は、屋上庭園からの眺めも目玉と言える。ニースには高層の建物がないので、6階建てのビルぐらいの高さしかない現代美術館の屋上庭園からも見事な町のパノラマを楽しむことができる。
現代美術館のあとは、学生5名とネグレスコ・ホテルのバーにまた行った。先週行ったのとは別の学生だ。本当はここには全員連れてきたいのだけれど、十数人連れてぞろぞろ入るような場所ではない。バーだけでも風格があっていい感じなのだが、やはりこのホテルの見どころはバーの奥にある大広間だ。バーで何かを頼むと、この大広間を見ることができる。バーで飲むコーヒーは8ユーロ。ケーキも一緒に頼むと20ユーロを超えてしまうが、奥の大広間とその周囲に展示されている芸術作品の鑑賞料込と考えれば、これくらい支払う価値はあると思う。20世紀初頭のベル・エポックの贅沢さを堪能できると思えば。
個人的にはこここそニース観光の穴場であると思っている。
ネグレスコ・ホテルの大広間や他の広間を見学したあとは、近所にある私がいつもお土産を購入するチョコレート屋に寄る。妻のお土産のチョコを購入した。
コロナウイルスと発表要旨の執筆が進まないことに起因する憂鬱をのぞけば、平穏な日だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿