クラス変更の学生のための手続きをまずやった。この手続きの承認を行う担当者が形式主義でちょっと面倒くさい。真面目で堅実に仕事はする人なのだけど。午後はカーニバルの花合戦に行くことになっていた。これは学校のアクティビティではなく、片山企画。学生19名のうち、13名が参加した。
カーニバル開始直前は混雑するので、午前中に14名分のチケットを購入しに行った。移動にはニース市内のレンタル自転車システム、vélo bleuを利用する。市内の数十箇所にある自転車ステーションで自転車を借りて返すことのできるシステム。パリにも似たようなシステムがあるはずだ。一方通行の道が多いのがちょっと大変だが、ニースぐらいの規模の都市では自転車の移動が一番効率がいい。vélo bleuは一か月で10ユーロで乗り放題だ。利用にはウェブでの事前登録が必要でフランス語がわからないとちょっとハードルが高い。また利用者認証のため、現地で使える携帯電話が必要となる。私は4年前からフランスの電話会社orangeのプリペイドsimを利用している。30ユーロで一か月有効で、通話と5ギガのデータ通信が可能。電話番号の維持には半年ごとにチャージが必要だが、このところ半年に一回はフランスに行く機会があるので。やはりフランスの電話番号が使えるとなにかと便利だ。今回はとりわけ到着当日に迎えのトラブルや病院付き添いで緊急の連絡を取らなくてはならなかったので。
ニースのカーニバルは大きく2つのプログラムからなり、一つは昼間に海岸通りで行われる花合戦、もう一つは夜にマセナ広場で行われる電飾パレードだ。フランスでは最も規模の大きいカーニバル祭で、ニースで始まったのは19世紀終わり。カーニバル自体は中世から肉食を断つ四旬節の始まる前日の灰の水曜日に貯蔵していた肉を食べ、大騒ぎをするという習慣はあったのだが、それを観光客向けのお祭りにしたのが19世紀末。このニースのカーニバルをもとにリオのカーニバルも始まったが、アナーキーなエネルギーと巨大さでは今ではリオの方がすごくなっている。
花合戦では花を一杯積んだ山車に乗ったきれいなお姉さんが、南仏の春を告げる花であるミモザを観客に投げるという趣向がある。
「カーニバルも見られるよ」と言って学生を集めていて、それを楽しみにしている学生が多いので毎年行っているが、正直見世物としては一度見れば十分の代物だ。観覧入場料を取ることもあり、完全に観光客向けのお祭りなのだ。内容は基本は山車のパレード。ねぶた祭のフランス版という感じ。しかしニースのパレードは無国籍インターナショナルで、時事ネタを扱った山車もある。祭は日本の伝統的なものの方がニースのカーニバルよりはるかにおもしろいものが多いと私は思う。
毎年2月後半に2週間行われる。毎日パレードがあるわけではなくて週末と週の中日の火水。カーニバルは椅子席もあるが椅子席は高いし、パレードとの距離があるので、祭っぽい熱気が弱い。盛り上げるための演出はあるのだけど。それで立ち見席を買うのだけど(12ユーロ)、これはずっと立ちっぱなしなのがつらい。パレード自体は80分ほどで一回りするのだが、その前に60分以上の待機時間があるのだ。しかもおそるべきことにカーニバル会場には簡易トイレさえない。夜のパレードはかなり冷え込むので大変だ。
非常勤先の教員室で一緒のテーブルの先生から貰ったタイ土産の帽子をニースで被ると約束していたので、カーニバルに被っていく。仮装というわけではないが、話しかけてきたり、写真を一緒に撮ってという人がいた。
カーニバルのあとは昨日、ネグレスコホテルに連れて行けなかった学生数名とまたネグレスコのバーとサロンへ。客室フロアに行くエレベーターがかっこよかったので、ホテルスタッフが見ていない時にそっと乗り込んで、客室フロアを見物した。各客室フロアの廊下や階段にも数々のの美術品が展示されていた。サロンも素晴らしいが、ホテル全体が美術館という感じだ。またフロアごとに展示や内装の統一イメージも変えていて、各フロアの趣向の違いも面白い。さすが高級ホテルだなあと感嘆。ただネグレスコは高級といっても一番安い部屋なら3万円程なので、気張れは庶民でも泊まれないことはない。ここに泊まる日本人観光客も結構いるようだ。
ホテルからの帰り、帰国子女の研修参加者2人を彼女たちの住む家まで送る。この2人は高くて鼻にかかった幼い感じの話し方をし、うち一人はファッション雑誌のグラビアから抜け出たようなネジのゆるいお嬢様みたいな浮いた格好なので、何となく「こいつら大丈夫かな」と心配していたのだが、
「先生は私たちのこと、頼りないと思っていると思うけど、私たち、二人でいるときは周りを気にしてサッサと歩いているんですよ。小さくて弱いアジア人の女の子だとからかって来る人がいるかもしれないと思っているから」と言う。
実際、彼女たちの歩くスピードはその印象とは違い快速だった。これなら確かに大丈夫だ。だてに海外暮らしが長くないなと思った。
他の日本人学生は彼女たちに比べるとその町歩きぶりはやはり全然緊張感が足らない。のほほんとし過ぎていて、私はヤキモキする。
家での夜飯は、ベトナム・中華風の汁麺だった。美味い。こんなにバラエティに富んだ夕食を出す家庭はそうそうないだろう。
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