ニース第4日目、授業は2日目。特にトラブルのない平穏な日だった。
レベルのもっと高いクラスに移りたいと言う学生が3名いた。もっとフランス語ができるようになりたいと言う意欲の現れだ。「日本人のグループでたかが2週間ほどの語学研修なんて観光気分の遊びじゃないか?」といった見かたもあるかも知れないが、短い期間であってもそれ決定的な意味を持ちうる濃厚な体験になることもある。
私にとってフランス語教育学会の推薦で参加したケベックでの3週間の教授法研修、ニースでの2週間の教授法研修は、自分の人生における選択に影響する大きな経験となった。
今日の午後は学校のプログラムで、ニース現代美術館に行った。今回、我々のグループを引率してのは若くて美しい女性のジョシアだった。昨年8月からこの学校の文化的活動担当者として働き始めたとのことで、私とは初対面だった。可愛らしくて、しかも話し方も実に明瞭でスマートだ。昨年までは学生だったという。何を専攻していたのか聞くと、舞台芸術とのこと。ダンサーとして舞台に出演するするだけでなく、美術や衣装のデザインも行うと言う。そして彼女はこの学校で送迎係のバイトをしているロシア人音楽家、私が昨日空港送迎の車に同乗したイリヤの妻だった。
イリアの妻となると、昨夜のイリヤの話ではモナコの劇場でバレエを踊っているはずなのだが、彼女に聞くとそれはイリヤの前の奥さんのことだった。私のフランス語聞き取り能力はかなり問題がある。
大学で美術史も専攻したジュシアの美術館での英仏語での説明は聞き応えがあった。ニース現代美術館の目玉は常設展示のニキ・ド・サンファルの作品とニース出身のイヴ・クラインの作品だ。クラインは青のモノクローム作品で名高いが、赤一色の作品もあった。その隣で写真を撮る。
現代美術館のあとは学生数名を連れてニース随一の高級ホテル、ネグレスコホテルのバーでお茶を飲み、ホテルの大広間を見学した。この大広間の空間の贅沢さを見せたかったのだが、2019年に入ってから大広間の半分をレストランにしてしまうという無粋な愚行をホテルが始めていた。ホテルの内奥にガランとした広大な空間がある贅沢さこそ素晴らしかったのに。
ホテルを出てから、ホテル前の海岸でしばらく景色を楽しむ。現代美術館の屋上テラスからの眺めも海岸から見る眺めも本当に美しい。
「ニースは街の風景自体がアートなんですね」と学生の一人が言っていたが、まさしくそうだ。ニースの町の造形美は20世紀始めに完成されたものだ。ベルエポック期のフランス人の自然の景観を生かした都市建築美学の見事さは驚くべきものだ。
ブラバン家の今日の夕食はあっさりめ。モナコの名物の揚げ物料理、バルバジュアンの乗ったサラダ。ドレッシングの味が絶妙だった。これにプラスしてパンとフォワグラ。
12歳のエヴァンは家にいるときは、ゲームばかりをやっている。何か話しながらやっているので、ゲームの人物になりきって話しているのかと思えば、友達と通信対戦みたいなことをやっているらしい。
ギヨームとマニアの夫妻はよく会話する夫婦だ。まだ三十代後半の夫婦だと思うのだが、「大人」としての振る舞い方が身についているのにも感心する。ちゃんと自分を律している感じ。疲れてイライラしてケンカするなんてことは滅多にないのだろう、この夫婦は。
マニアは家事も仕事も完璧にこなすスーパー母さんだ。ギヨームも家事を厭わない。いつも静かな笑顔の温厚な男性だ。
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