2023年8月4日金曜日

2023/8/3 ニース第5日

 午前中がアンティーブに遠足、午後は授業という日。アンティーブにはピカソ美術館がある。元々はモナコ大公の居城だった建造物だが、第二次世界大戦後の一時期、ピカソがこの居城の一室をアトリエとして使っていたそうだ。その時期に制作された作品が主に展示されている。

学校企画の遠足だが、Azurlinguaの美術館遠足は鑑賞時間の設定が30分ほどしか取られていない。もっと長い時間美術館にいたい学生もいるかと思い、ガイドのローラに相談して、1時間美術館に滞在するグループと20分ほど滞在してアンティーブの町を散策グループに分けようということになった。


アンティーブはニースからローカル線で30分ほどのところにある。旧市街のサイズもそこに建てられている建物の高さもニース旧市街の2/3ほどだが、そのこじんまりしたサイズがとても可愛らしくて魅力的な町だ。美術館は旧市街の海岸沿いにあるが、この町並みや広大で活気のあるマルシェの様子を目にして、美術館に長時間滞在するつもりだと言っていた組にも迷いが生じたらしい。結局、30分美術館に滞在したあと、全員で町を散策することになった。午後から授業があるので、現地の滞在時間を延ばすことはできない。限られた時間で何を選択するのか、迷ってしまうのはわかる。多くの学生にとっては次にここに来られる機会があるかどうかはわからないし。

ただピカソ美術館はピカソの晩年の子供の落書きのようなシンプルな線の作品が多いとはいえ、展示室に入るとピカソ以外にもニコラ・ド・スタールなどの魅力的な作品が数多く展示されている。30分で出てしまうのはもったいないような美術館ではある。

ピカソ美術館のあとは、マルシェに行った。アンティーブのマルシェは、ニース、カンヌと並んで、コートダジュールを代表する大規模なマルシェだ。マルシェは毎日開かれていて、屋根がある。肉、野菜、惣菜、チーズ、お菓子など色とりどりのさまざまな食料品が並んでいて、賑やかで活気がある。商品を見ていると、マルシェの各店舗の店員たちも人なつっこく話しかけてくる。マルシェには20分ほどいた。そのあと旧市街をさらっと回り、学生たちは海岸の港のそばにある観覧車に乗って楽しそうだった。ニースの旧市街をコンパクトして、コートダジュールの町の魅力のエッセンスが凝縮されたようなアンティーブは、ニース近辺の町のなかでも私が特に気に行っている町だ。正味二時間ほどの滞在でこの町を出てしまうのはもったいない。
ニースへの帰りは、ちょうどホームに入ってきた列車に飛び乗った。しかしこれはTGVだった。TGVは本来は予約必須のはずだ。ローラはついうっかり私たちを乗せてしまったようだった。私たちの切符はローカル各駅停車のものだったので、車掌が検札にくれば罰金を取られる可能性もある。アンティーブからノンストップで、このTGVの終着駅であるニースに到着した。幸い車掌は検札に来なかった。

これまでニースやパリなどで数多の「試練」に遭遇して鍛えられてしまったので、私はどうしてもフランス人に対して厳しくなる、警戒してしまうところがある。たまに腹に力を入れて向き合わないとならないような事態があるけれど、今のステイ先の大家もAzurlinguaの学校のスタッフも実はなにかとこちらの心中を忖度して、彼らなりのやりかたで気を遣っていることに、時々気づく。フランス人の振る舞いに対して「なんて優しいんだろう!」と感動することは少なくない(むしろ日本人に対してよりはるかに多い)のだけど、それでも戦闘準備態勢を解くことはできない。これが私にとってフランスのしんどさでもあり、面白さでもある。

昼飯は中心部にあるレストラン、オスカーで。今日はピタパンの上に野菜や鶏肉がどかっと乗ったレバノン風のオープン・サンドウィッチみたいなものかきのこのクリームソースのパスタの二択。「ピタ」のナントカとかというのを聞いたときはそれどんな料理か見当つかなかったのだが、そのよくわからないピタを私は選んだ。野菜がたくさん取ることができたのがよかった。味はまあまあ。もし可能ならちゃんとしたレバノン料理屋にも滞在中に行っておきたいものだ。
午後は2時45分から90分の授業を2コマ。授業を集中して受けるのは疲れるものだなあと思う。午前中に遠足で、午後に三時間授業を受け、終わったら午後6時というのは、ニースでの時間の使い方としてはもったいないような気がする。せっかく夏のバカンス時期に来ているのに、夜のニースで遊べないのはかなり物足りない感じだ。遠足が日中に入るので、遠足+授業だと、授業が終わるとけっこうくたくたになってしまう。
これまで夏のこの時期にニースに来たことは3度あるが、それらはいずれも海外の教員向け研修だったので、夜は中南米、地中海地域、東欧、アフリカ、韓国などの世界各国のフランス語教員と旧市街にほぼ毎晩遊びに行っていた。遊びと行っても一緒に飯を食って、そのあと音楽などを聞きに行くというものだったが。今回は学生が一緒なのでそういうわけにはいかない。毎日昼間に遠足があるというのが、思いのほかきつい。今日は午前中で日差しがそんなに強くなかったのでよかった。坂道を登ることもなかったし。気温が一番高くなる夕方も30度に達しておらず、過ごしやすかった。
夕食は昨日の残りの鶏肉のローストに、タブレのサラダ、それにchouchoukaという唐辛子が効いた野菜の煮込みというメニューだった。あとチーズと果物も。
平穏で安らかな日だった。

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