2023年8月10日木曜日

2023/8/9 ニース第11日

 午前8時起床。今日の午前中の予定は空白だ。ニース到着以来ずっと朝から晩まで詰まっていたので、予定のない時間があるとほっとする。これまでまだ行ったことのないニース市内の美術館や博物館がいくつかあるので、そこにひとりで行こうかなと思ったが、結局、家でダラダラと過ごした。昼飯はAzurlinguaの校長のJean-Lucと取る約束を先週、口頭でしたのだが、彼からは何の連絡もない。もしかすると忘れてしまっているかもしれないなと思いながら、12時半ごろに学校に到着すると、学校の入り口で彼は私を待っていた。

学校から歩いて5分ほどのところにあるニース料理店で一緒に食事を取った。ジャン=リュックの行きつけの店のようだ。前菜、パスタ、主菜、デザートとフルコースでニース郷土料理を食べる。小さくて庶民的な佇まいの店だが、いろいろ表彰されたり、取材されたりしている人気店のようだった。実際、料理は絶品だった。
食事中、ジャン=リュックからなにかビジネスがらみで話があると思えば、彼はあまり話さないし、こちらに話題を振るようなことも積極的にはしない。「あれ? 彼、こんなにしゃべらない人だっけ?」と思いながら、私が主に、とりとめのない話をダラダラした。私とこんな「社交的」な会話をして、それが彼に何の意味があるのだろうか、と思いながら食事をした。出てくる料理は絶品。高級料理ではないけれど、自分はむしろこうした庶民的な料理のほうが好きだ。80分ほどレストランにいたと思う。支払いはもちろんジャン=リュックのおごりだ。レストランを出て50メートルほど学校のほうに戻ったところで、ジャン=リュックは「あ、私は学校とは別の場所で約束があるから、ここで別れよう」と言う。そして私の手を握ると、「今度、おまえが研修でニースに来るときは、私かエリックに直接連絡するんだ。他の奴に連絡する必要はない。私かエリックだ、わかったか?」と力強い調子で言った。
3年半ぶりに行ったニース語学教育研修実施にあたっては、事務手続きでいくつか学校側の不手際があった。こうした正確さの欠如はフランスではよくあることなのだけど、入金確認についてかなり重大なミスがあったこともあり、私は、今回の研修の準備で私の対応をした日本人女性スタッフを介してクレームを学校側に伝えた。また先週ジャン=リュックに会ったときにも口頭で伝えたし、facebookの投稿でも言及した。こうした指摘を彼は実はすごく気にしていて、深く傷ついていたことに気づいた。最後のメッセージを伝えるために、彼は90分の会食を設定し、そこでたいした内容がない社交的会話を行い、何十€かを支払ったのだ。こうした「演劇的」とも言えるメッセージの伝え方には、胸をドンとつかれたような衝撃を受けた。なんとも言いがたい動揺というか。成功しているといっていい語学学校の経営者の強かさと繊細さを一挙に受け止めたような気がした。それにしてもたかが小グループの引率者に過ぎない私に。こんな経験ができるからニースはたまらない。
午後の授業では「国境」がテーマだった。アゼルバイジャン出身でドイツに移住した学生の話、チェコ人が語るスロバキアについての感情、カタローニャ人とスペイン人のやりとりなど、とても興味深かった。
夕食は、3年半前の前回のニース研修実施以前の三回の研修で、私が滞在先にしていたマダガスカル人の一家に食事に行った。今回の研修でニース到着当日に、偶然学校の前で、マダガスカル人一家のdameに出会ったのだ。前回の研修後、すぐにコロナ騒動となった。帰国後に彼女に一回メールを出したが、その後特に連絡は取っていなかった。
彼女の家には兄妹の二人の子供がいるのだが、この二人が大きくなって別々の部屋を与えることになったため、Azurlinguaの受講生の受入れは1年半ぐらい前にやめたと聞いた。
思いがけない再開だったので手土産は用意していなかった。日本で購入していたキットカット抹茶味二袋とニース旧市街でワインを買って持って行った。
4人家族のうち、息子は18歳の思春期後期で、夕食時なのに外出してしまっている。妹のほうは16歳になっていた。最初見たときはdameの妹かと思った。ベランダをテラス席にして、19時半から22時過ぎまで食事と歓談。最初は少々ぎごちなかったが、徐々に以前の感覚が戻ってきた。このマダガスカル人一家はまずご飯が異常においしかった。伝統的なフランス家庭料理だけでなく、中華風、インド風の料理、そして私のリクエストがあるとマダガスカル料理が出てきた。今回もマダガスカル料理を準備してくれていた。昼食で食べ過ぎたのでお腹が全然空いていなかったのだが、結局出てきた料理は料理は完食。主菜は豚肉と豆の煮込み。3年半ぶりに食べるこの家のごはんはやはり最高だった。
この家には二週間かける3回滞在している。一回の滞在で10回ぐらいは一緒に飯を食べて、食事中にいろいろ話をしているので、気心が知れている。他人に対してずっと心のどこかで用心しなければならないようなフランスで、この夫婦とは腹を割って、私のつたないフランス語ではあったが、日本人同士でもすることないような、率直な言葉のやりとりをすることができていたように思う。今回もとても安らかな気分で彼らと一緒に食事を楽しんだ。




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