2017年3月9日木曜日

レンヌ・カン・パリ2017春(4)3/8

一日中雨模様の日だった。
ニースからブルターニュ、ノルマンディに来て以来、寒い日が続いている。東京では自転車に乗るときしかはかなかったユニクロのタイツを、レンヌ以来はいている。こっちの足元から腰にかけて冷える感じなのだ。3月に入るとだんだん暖かくなると思ったのだが、見込みが甘かった。

今日はカーンから電車で20分ほど離れた場所にあるバイユーに行った。ノルマンディ公ウィリアム(フランス語ではギヨーム)が、イングランドの王位を継承したときの戦いの様子を描いた11世紀の有名なタピスリーがここにある。幅50センチで全長が70メートル近くある布に刺繍で戦いの発端から最後まで、マンガのような感じの絵物語が続く。絵柄はマンガっぽく、横から見た絵だが、闘いや食事、略奪、交渉などの様子はかなりリアルに書き込まれている。簡単なラテン語で絵の様子や人物の説明がやはり刺繍で記されている。上と下の余白にある裸の男女や怪物などの装飾絵も面白い。中世研究者なら一度は見ておきたい作品だ。オーディオガイド(日本語もある)を聞きながら最初から最後まで順番に見ていく。作品保護のため写真撮影はできない。美術館でお土産は滅多に買わないのだが、ここではバイユータピスリーの画集を買った。

バイユーの考古・歴史・工芸・美術博物館とノルマンディ戦史博物館のセットチケットを購入したが、残りの二つの美術館・博物館(フランス語ではどちらもmusée)は昼休みがあって14時まで開かない。町の中心部で開いていたレストランに入り、フィッシュ・アンド・チップスを食べたがボリュームが少なくて物足りない。値段も12ユーロとけっこう高い。この店の「本日のおすすめ料理」はポトフで、そっちのほうがボリュームがあって、おいしそうだった。

飯を食べたあとは、一番古い部分は11世紀のロマネスク時代だというバイユー大聖堂を見学。12世紀後半のゴシック様式の部分も多い大聖堂だった。ステンドグラスが美しい。大聖堂のあとは、近くにあったバイユー考古・歴史・工芸・美術博物館を見た。バイユーは陶器でも知られていて、19世紀の陶器の展示もあった。それからノルマンディ戦史博物館に行く。戦史博物館は町の中心からは離れたところにあり、20分ぐらい雨のなかを歩いた。ノルマンディ上陸作戦についての博物館だが、情報量が多すぎてついて行けなかった。兵器などの展示はそれほど多くない。



戦史博物館の帰り、「ベネディクト修道院のお店。修道院の製品や本など」と書いてある看板を見つけた。帰り道からははずれた路地にあるが、行ってみることにした。店の入り口は明るくてきれいだ。入り口に立つと、修道女のおばあさんが「ボンジュール、マダム」と声をかけてきた。赤い服を着ていたから女性に見えたのだろうか。
客は誰もいない。売っている商品はジャムや酒やシロップ、バターやお菓子など多様な食料品とロザリオや十字架などのグッズ。それと書籍。修道女のおばあさんがひとつひとつ商品について説明する。店内はかなりひろびろしていた。ここの修道院は宿坊もやっているとのこと。「ごはんがとてもおいしいと評判なんですよ」と修道女の人。なかなか商売熱心だ。
一通り説明してもらったし、ニコニコ笑いながら説明する修道女のおばあさんがあまりにも可愛らしかったので、何か買わなければ悪い感じがして、結局ベネディクト会謹製の板チョコを三枚購入した。



バイユーからカーンに戻ったのは午後5時半。今日は7時から竹中香子さんが出演する『夢とメタモルフォーゼ』の公演を見るので、その前におなかに何か入れておきたかった。この公演は上演時間が4時間を超え、終演は夜11時過ぎなる。さっと食べて腹にたまる、そして美味しいとなると、ケバブしかない。駅前に数件ケバブ屋はあったが、グーグルマップで検索して、コメントでこの界隈で一番うまいとあったケバブ屋に行くことにした。カーンの町中はワイルドな雰囲気はないが、駅周辺、とりわけ旧市街と反対側は、いい顔つきの若者たちがけっこうたむろっていてちょっと緊張する。ケバブ屋は駅から歩いて10分ぐらいのところにあった。
まず外からケバブ屋の写真を撮っていると、ケバブ屋の兄ちゃんがニコニコ笑いながら「入ってきなよ」と手を振ってきた。もとよりそこに入るつもりだったので入ると、
「写真撮っていたけれど、あんたはジャーナリストか?」と聞いてくる。
「いやジャーナリストじゃないけれど、ツーリストだ。本物のケバブを探しにやってきたんだ」と答えた。

このケバブ屋の常連客のおばさんがいて、「日本人か?私は日本の着物と寿司が大好きで」と話しかけてくる。ケバブ屋のお兄さんはモロッコ出身だそうだ。22歳のときに、カーン出身の女性と結婚して、モロッコからカーンに。ケバブ屋もそれから初めて8年目。子供は3人いる。ケバブ屋は繁盛していて、一日に300人くらいの客が来る。そのため朝の5時半に店に来てパンを焼いているんだ。といった話を、ケバブを作りながら話してくれた。ケバブはごく標準的なスタイルのケバブ。味も特に特徴はない。おいしかったけれど。私はケバブソースは常にアリッサ・マヨネーズの組み合わせだ。

ケバブを食ったあと、カーン劇場に行った。休憩20分くらいを含み4時間20分の舞台。公演の感想についてはまた別に書く。公演終了後、竹中さんと写真を撮った。うれしい。

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