2024年2月29日木曜日

2024/2/28 ニース第12日

今日は午後に学校主催のイベントがない日だった。私の企画で午後はイタリアとの国境の町、マントンに行き、夜は旧市街のケバブ屋で飯を食べた後、カーニバルのCorso carnavalesque illuminé、イルミネーションされたパレードを見に行くことにした。
午前中、Azurlinguaに行く前にカーニバルチケットを購入する。立ち見席で7ユーロ。Azurlinguaに到着したら、事務所に寄って昨日ようやく受領したTGVのe-ticketを印刷してもらった。SNCFのe-ticketは送られて来たpdfを印刷することが前提となっているのだ。
カフェテリアの昼飯はコウイカの煮込み(フリカッセ)とパスタにした。コウイカの煮込み、見た目は美味しそうだったが味付けがしょっぱすぎる。あきらかに塩を入れすぎ。
ニースからマントンまでは鉄道で30分ほどである。地中海を臨む高台の斜面に形成されたマントンの旧市街は、私が訪れたことのあるコートダジュールの町のなかで、最も優雅で、ダイナミックで、美しいと思う。二月の後半はレモン祭の時期だが、平日水曜の今日の午後はパレードなどのイベントはない。マントンにはこれまでレモン祭のパレードのある日曜に行っていたので、いつもすごい人混みだった。今日はパレードがない平日午後なので、ほどよい賑わいだった。
マントン駅を降りてすぐのところにあるビオヴェス庭園ではレモン祭の時期には、大量のレモンとオレンジを使って作られたモニュメント像の展示が行われている。これまで私が行ったときにはこのレモンとオレンジのモニュメント像の見学は有料だったのだが、今年は無料開放されていた。30分ほど、モニュメント像が並ぶ公園を自由に散策する時間を作った。このモニュメント像の展示には毎年テーマが設定され、それに沿った像が造られるのだが、今年のテーマはオリンピックだった。
今年の七月末から八月はじめにかけてパリでオリンピックが開催される。このため夏のバカンス時期のフランスのホテル代は高騰していて、通常の数倍となっているところもあるらしい。ニースは夏にはバカンス客が殺到する都市だが、オリンピックの余波でこの夏はいつも以上に大量のバカンス客が訪れることが予想されている。Azurlinguaも夏のバカンス時期は近隣諸国からバカンスを兼ねて、語学研修をやりたいという人たちによるかき入れ時なのだが、今年の夏はすでに各ホームステイ先に受入可能かどうかのアンケートが入っているそうだ。この夏は滞在費も航空運賃も高騰不可避のようで、フランスへの旅行はほぼ無理だろう。円安も今後どれくらい進行するのだろうか? 円安の進み具合では来年はこのニース研修も実行が難しくなるだろう。
平日午後にマントンに来たのは初めてだったので、今回ようやくマントン市役所にあるジャン・コクトーによって装飾された結婚式ホールを見学することができた。このホールは平日の16時までしか一般開放していないのだ。フランスでは市役所や区役所には必ず結婚式を行う部屋が用意されているらしい。https://info.ensemblefr.com/mariage.html
マントン市役所の結婚式ホールの見学は有料でひとりあたり1ユーロだった。普通に役所で執務している職員に見学を申し込む。ホール見学にあたって日本語の解説録音があったのには驚いた。ここを訪問する日本人観光客はこれまでどれくらいいたのだろう。マントンを訪れ、さらにこのホールにやって来る日本人観光客はそんなに多くないはずだが。私たちがホールを見学している最中に、ホール内にあるスピーカーから日本語による解説が流れた。10分ぐらいの充実した内容の解説だった。学生たちの大半はコクトーの名前も知らなかったと思うが、鑑賞のためのよいガイドになったと多う。
ジャン・コクトーの絵については、私はこれまで油絵の自画像ぐらいしか記憶がない。結婚式ホールの装飾画は壁面と天井一杯に描かれていて、オルフェウスとエウリディケなど神話的題材に基づく簡素にデザイン化された装飾性の高い、軽やかな画風の作品だった。コクトーは詩人、劇作家、小説家、映画監督、そして画家など、多領域でセンスのよい秀作を残した芸術家だが、あまりに才能が多領域過ぎたためか、器用ななんでも屋のアーティストみたいな感じで、一流ではあるけれど、「通」好みではないというか、軽んじられているような感じがある。来日したこともあり、そのときに見た相撲や歌舞伎について海外の芸術家らしい視点から面白いエッセイを残している。その圧倒的な多才ぶりと軽やかさで生涯の最後まで幸せに、面白おかしい人生を過ごした人なんだろうなと思った。
コクトーの結婚式ホールのあとは、コクトー美術館「防塁」館へ。海岸沿いの防塁を美術館として利用している。マントンにはコクトー美術館本館も「防塁」館から百メートルほど離れた場所にあるのだが、こちらは数年前に台風かなんか浸水してからずっと「臨時閉館」中だ。本館ははじめて私がマントンに来た8年前に一度だけ見たことがある。ディアギレフのロシア/バレエ団公演のためも舞台美術のスケッチなど私にとって興味深い展示が数多くある美術館なのだが。「防塁」館に入るのは今回がはじめてだった。80平米ほどの広さのフロアの小さな美術館だった。黒字の画用紙にパステルで、イタリアの伝統的仮面喜劇、コメディア・デラルテに登場する恋人を描いたシリーズ、《innamorati》「恋人たち」のシリーズが展示されていた。
コクトー美術館「要塞」館を30分ほどで出て、1時間ほど自由な散策時間を取った。このあいだにマントン旧市街を散策した。地中海を臨む斜面に形成されたマントンの旧市街は、コートダジュールの街の中で最もダイナミックで優雅で美しい地域だと私は思う。この時期のフランス/イタリアの都市景観美に対するセンスは驚くべきものだ。
鉄道でニースに戻ったのが18時半。それから旧市街でケバブを食べてから、ニースのカーニバルのメイン・プログラムの一つである「イルミネーション・パレード」Corso carnavalesque illuminéに向かった。
ケバブ屋は私の大家が先日絶賛していた店だ。レバノン人がやっていて、レバノン料理も出す。レストランというよりは軽食堂といった感じ。11人の学生を連れてきたが、外食のときの学生たちのモタモタぶりが気になってしまう。確かに外食は、実はこうしたローカル軽食堂ほど、独自の注文プロトコルがあって戸惑うことは多い。慣れの問題であり、ある程度場数を踏まないとスムーズにはいかないだろう。
女子グループ三人組が早めに食べ終わったのでいったん家に戻ってから、カーニバル会場で合流するのでもいいかと聞いてきた。カーニバル入場までの時間つぶしもかねてこの軽食堂にはいったのに、なんでまた20分ちかくかけて一度家に戻ったりするんかな、20分もすればカーニバル会場に行くのに、と思ったが、あとで聞くとトイレに行きたかったらしい。フランスでは清潔で誰でも使える公共トイレが日本よりはるかに少ないので、トイレ問題は重要ではあるが、飲食店には必ずトイレはあるし、そこの客は当然トイレを利用する権利がある。彼女たちはこのケバブ屋にトイレがあるとは思っていなかったとのことだった。このケバブ屋、町中の軽食堂ではあったが、トイレは広くて清潔だった。
ケバブが売りの店だが、レバノン人がやっているのでレバノン料理のメニューもあった。私はケバブではなく、レバノン料理の定食を食べた。野菜類のおかずが数種類入っているし、ボリュームもある。味もよかった。しかしワン・プレートのこの料理が、円安の今では2700円という値段になる!!!! 東京でこんな場所でこのクオリティの大衆飯がこの値段というはまるあり得ない。円換算するとフランス外食は「ぎゃっ!」と叫びたくなる。
「トイレ離脱」した3人とは、混雑している上に暗いカーニバル会場では再会できないのかと思ったら、奇跡的(でもないのか)に会場で落ち合うことができた。Corso illuminéは、大音響の音楽のなか、巨大でグロテスクな人形を乗せた山車がパレードするというもの。予定開始時刻は8時半だったが、実際には8時50分ぐらいから山車が動き始めた。
明日は学生たちは朝から授業があるので、夜10時頃に切り上げる。野外で立ったままのパレード見物だったが、幸い、夜も気温が下がらず、寒い思いをしなくてすんだ。学生一人がパレード最中に体調不良になる。ガンガン響く低音に気持が悪くなったとのこと。ちょっと心配だったので、家近くまで送り、そこからUberを呼んで自分の滞在先に戻った。Uberは便利。呼び出して一分ほどでやって来た。




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