2025/02/22(土)第8日
今回の研修では、授業のない週末の滞在が、2/16、22、23、3/1の4日ある。この4日間は、日中にどこかへ行くプログラムを考えなければならない。先週の日曜日、到着の翌日にはカンヌに行った。明日、23日はボリュ・シュール・メールのヴィラ・ケリロスと、フェラ岬のロスチャイルド家別荘に行く予定である。そして、3/1はサン=ポール=ド=ヴァンスに行く。
本来なら、今日はニースから私鉄プロヴァンス鉄道で、アルプス山中にある城塞集落アントルヴォーに行く予定であった。アントルヴォーにはこれまで何度か行ったことがある。ニースからは、可愛らしいデザインの鉄道に乗って約2時間弱で行ける。日本のガイドブックでここを紹介しているものはおそらくないが、わざわざ時間をかけて赴く価値がある、ここでしか見られない景観美を楽しむことができる。学生を連れてのニース研修では最も見せたい場所の一つであったが、おとといの夜、時刻表を確認したところ、今年はシーズンオフの時期のアントルヴォー行きの便が削られていることを知る。これまでアントルヴォーに行くときに利用していた便は夏のみの運行となっていた。ニース発の列車は午前中、朝8時のものしかなく、これは早すぎる。また、帰りの便も午後の早い時間帯に1本と、19時以降に1本しかなく、これでは日帰り遠足としてアントルヴォーへ行くのは不可能である。
代替地を探したが、16人という大人数となると、移動手段の確保や現地での食事、過ごし方などにいろいろ制約があり、結局妙案が見つからず、今日はフリーデーに変更してもらった。希望者は私と共に、ニース美術館と旧市街にあるラスカリス宮、そしてショッピングを行うことにした。
10時半にニース駅で待ち合わせたところ、8人の学生が集った。学生の一人から風邪の症状で家で休むとの連絡があり、熱はないとのことであった。私も一昨日から鼻水と咳があり、昨日、ニースの薬局で薬を購入した。男子学生の一人も同様の風邪症状を示していた。
まず、駅から30分ほど歩いてニース美術館へ向かった。ニースの西の中心部から外れた場所にあるこの美術館には、これまで訪れたことがなかった。この美術館はニース市立のもので、学生は入場無料である。Jules Chéret(1836–1932)という、ニースに縁のある画家の名前が賦けられている。イタリア風の堂々たる建物は、19世紀半ばのロシアの大公によって建設されたものである。当時、温暖で風光明媚なニースは、避寒地としてロシアやイギリスの貴族、大ブルジョワが訪れる町であった。ロシア大公の別荘は、20世紀初頭にニース市の所有となり、美術館として一般に公開された。
ニース市内にはいくつかの市立美術館があるが、最もコレクションが充実しており見応えがあるのはニース現代美術館である。しかし、ニース現代美術館は昨年から続く大規模な改修工事のため休館中となっていた。ニース美術館は中世から近代、ベル・エポック期にかけての作品を中心に展示しているが、美術館の規模はそれほど大きくない。しかし、ジュール・シェレのようなご当地画家の作品だけでなく、ディドロの肖像画で知られるロココ期の肖像画家Louis Michel van Looや、古典主義の画家ゲランなどの作品も収蔵している。フランスでは、地方都市の市立美術館でも日本の企画展の目玉となるような作品を所蔵していることが多く、フランス美術の豊かさを感じずにはいられない。
また、ニース近郊の町ヴァンスに何度か滞在したことのある画家ラウル・デュフィ(1877–1953)の企画展も開催されていた。彼はマティスと交流があり、フォーヴィスムの画家の一人とされるが、その絵画は他のフォーヴィストよりも軽やかで装飾的である。デュフィの作品を一堂にまとめて鑑賞したのは、私は初めてだった。
1時間ほど現代美術館に滞在した後、トラムで中心地へ移動し、旧市街近くのショコラティエでチョコレートを購入した。これはこれまで何度も私の学生を受け入れてくれているイザベルさんへの誕生日プレゼントである。
早めに軽い昼食をとるつもりであったが、ショコラティエを出た後、旧市街のサン・レパラト教会に到着した時には13時20分になっていた。空腹ではあったが、夜はクスクスを食べる予定であったため、この時間にしっかりと食事をするわけにはいかない。40分ほど自由時間を設け、2時に再集合することにした。結局、私は何も食べず、バロック様式の装飾に埋もれたゴテゴテなジェズ教会で休んでいた。
2時に再び集合し、17世紀の貴族の旧邸宅を博物館として利用しているラスカリス宮に向かおうとしたところ、女子学生たちはラスカリス宮に行くより買い物をしたいと申し出た。正直、「え、マジ?」と思ったが、まあしかたない。旧市街にある、ニースで最もまともなワイン販売店で買い物を学生たちが希望したので、その店が午後3時に営業を開始するのに合わせ、店の前に集合することにした。
行くところがなさそうだった男子学生二人には、「おまえらも来るだろう?」と半ば強引にラスカリス宮へ連れて行った。17世紀のイタリア・バロック様式によるゴテゴテな豪華な内装と、主に19世紀の楽器展示は見応えがあり、フランス語のガイドブックでは「訪れるべき場所」として高く評価されている。しかし、この種のものに関心を示すにはある種の教養が必要であり、日本の学生が興味を持たないのは仕方がないともいえる。男子学生二人はベンチに座って時間を潰していたようである。
ラスカリス宮を後にし、ワインショップへ向かった。お土産用にワインを購入するなら、ニースのローカルワインであるベレ一択だと私は思う。私は下戸でワインには興味がないが、日本で購入するより安いとはいえ、何本も持って帰ることはできないのだから、日本でも容易に手に入る品種を購入しても仕方がないとように思う。ワインショップでの買い物の後、解散となり、私は一旦家に戻った。
夕方6時半、ガンベッタ通り沿いにあるクスクス屋で、その近所に住む学生6名と夕食を取った。学生たちは初めてのクスクス体験だった。私はこの店にはこれまで何度か利用していて、ニースで私が贔屓にしているレストランの一つである。クスクスとミントティーで20ユーロほどであり、私はメルゲーズ、仔羊肉、ミートボールを添えたクスクスを食べた。久々のクスクスはやはり美味であった。
その後、近隣に住む女子学生を家の近くまで送迎した。今回送った学生たちの住居は、SNCFの線路の北側に位置するガンベッタ通りとその横道沿いである。この付近の昼間の雰囲気は庶民的で良い感じであると思っていたが、夜になると私の予想以上に雰囲気が悪かった。若い男性があちこちでたむろしている。案外、悪い連中ではなく通行人にちょっかいを出すことないかもしれいが、女子学生にとってはその近くを通って歩くのは少し怖いに違いない。町は暗く、女性が歩いている姿はほとんど見当たらなかった。
22時前に帰宅した。家主のAnnickはパートナーのWalterとカーニバルを見に行っている。シャワーを浴びていると、浴槽の中ですべって派手に転んでしまった。幸い怪我はないが、シャワーカーテンをさせる棒が落ちてしまった。あと壁にしっくいみたいなものでくっついてた浴槽自体が、私が転んだときに壁を押した衝撃で壁から一部が剥がれてしまう。なんてもろいんだ。Annick帰宅後、状況を説明する。申し訳ないと思ったが、すべって転んだのはわざとではない。Annickは状況を見てかなりびっくりしたようだったが、「まあ、しかたない。たいしたことじゃない」で終わった。
Annickの家の滞在は今回は三回目で、飯はうまいし、彼女との相性は悪くないのだが、水回り(風呂、トイレ、洗濯)ことで気を遣わなければならなないのは、正直なところかなりうっとうしいなと思う。
Annickの家の滞在は今回は三回目で、飯はうまいし、彼女との相性は悪くないのだが、水回り(風呂、トイレ、洗濯)ことで気を遣わなければならなないのは、正直なところかなりうっとうしいなと思う。
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