2025/02/27(木)第13日
論文が終わらない。やばい。今日は日中は学校にも顔を出さず、ずっと家にいて論文を書いていた。この調子で滞在初日から書いていればなんとかなったのだが。昼飯は家の近所にある地元のレストラン、すなわち地域の常連たちが通う大衆的なカフェに食べに行った。昨日、Annickに教えてもらった店で、家からは歩いて5分ほどのところにある。「本日の定食」を頼んだ。前菜がサラダ(大きなトマトのスライスが入っている)、メインがキッシュ。味は特に美味しいというわけではなかったが、ボリュームはたっぷりだった。店員の応対がテキパキとしていて、しかも愛想がよくて実に気持ちいい。また常連の客たちのくつろいだ雰囲気もよかった。居心地のいい食堂だった。こういうところで飯を食うと、ちょっとフランスの日常に馴染んだような気分になれる。
食事後、浴槽の修理代を現金払いしなくてはならないので、ATMから金を200ユーロほど下ろす。
今日の夜は20時からシャガール美術館のホールで室内楽のコンサートの予定が入っていた。19時半にシャガール美術館入り口で待ち合わせだったので夜にゆっくり飯を食べる時間がない。「希望者は17時45分にガリバルディ広場のガリバルディ像の前に来てもらえれば一緒にソッカなどニースの惣菜を食べに行きますよ」と告知しておいたのだが、3人の学生がやってきた。人数が少ないほうが飯を食べる場所を探すのは簡単だ。ソッカを出す店はニースに何軒もあるのだが、ガリバルディ広場から歩いて10分ほどのところにあるChez Pipoという老舗のソッカ屋に行くことにした。ニースに数あるソッカ屋のなかでもよく知られている店のひとつだ。この店はソッカと軽食、デザートしかない。ピサルディエールというタマネギとオリーブの乗ったピザのようなものとピザ、それから店員に勧められたミニ・パン・バニャ(mini pan bagnat)という丸い小さなパンのサンドイッチ、それに加えてソッカを頼んだ。どれも素朴な郷土料理だったが、美味しかった。ソッカはひよこ豆の粉で作った塩味のクレープみたいなものだが、先週食べたTram Soccaのソッカは厚みがあってふわふわしていたのに対し、この店のソッカは薄手だった。見た目通りのシンプルな味で、美味しいといえば美味しいけれど、味は単調なのでそんなに大量にむしゃむしゃ食べたいようなものではない。コーヒー、デザートなども頼んで、19時ごろに店を出た。この店のブレッド(ふだん草)のパイ(Tourte de Blettes)は、今、思い返すと絶妙の甘さで美味しかったなと思う。おつまみみたいなものしか頼まなかったが、一人あたり10ユーロで安い。
シャガール美術館のホールでのコンサートでは小編成の弦楽オケで、アルヴォ・ペルト、ベッツィ・ジョラス、スティーヴ・ライヒの作品が演奏された。ペルトとライヒは現代音楽の作曲家のなかでも比較的聞きやすい音楽なのだが、今日演奏された三曲はがちの現代音楽だった。それでもライヒのTriple Quartetはやはり聞きやすいほうだったか。アメリカ系のフランス人作曲家、ベツィ・ジョラスの作品は私は初めて聞いた。バロック、古典主義の作曲家の曲の断片を変形させ、それらを再構成していくという、ラップのサンプリングのような手法の楽曲は、今、思い返すとパロディ的なユーモアもあって面白い曲だったようにも思う。ペルトの「東洋と西洋」ははじめて聞いた曲だった。東洋風、といっても中近東系の旋律に西洋風のハーモニーをかぶせていくというもの。地味な曲だった。レクチャーコンサート形式で、各曲の演奏前に指揮者が曲の解説を早口で行い、さわりの部分を演奏して聞かせたりしていた。現代音楽に親しんでほしいというある種のサービスなのだろうけど、さわりの部分の演奏はちょっとやり過ぎではないかと思った。
20時に始まって終演が21時20分。学生の参加者は七名で、男性が一名。演奏を聞きながらどうやって学生たちを家に帰すのがいいのか考えていた。シャガール美術館から3キロほど離れた海辺に住んでいる学生は、Uberを呼ぶことにした。幸い3分ぐらいでUberはやってきた。駅の北側のちょっと元気な若者がたむろっているような場所に住んでいる女性3人は、男子学生に送らせることに。残りの女性3人は、トラム1号線沿いの住人だったので私が送った。帰宅したのは午後22時半過ぎだった。
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