2025年2月27日木曜日

ニース研修2025 02/25(火)第11日

 

2025/02/25(火)第11日

MacbookAirが、電源アダプタ使用時には充電が停止され、どんどんバッテリーが減っていき、2時間ほどでシャットダウンしてしまうという現象に相変わらず悩まされている。スリープないしシャットダウンしている状態では充電可能なのだが。バッテリーの老朽化が原因のような気もするのだが、そもそも今、滞在中の家のコンセントの電圧(?)の問題ではないか、という気もする。MacbookAirのみならず、モバイルバッテリーも充電されないのだ。午前中はAppleのサポートセンターとチャットでこの件で相談しているうちに終わってしまった。電源のWの問題かもしれないし、もしかするとケーブルの不良とか。日本でこうした充電の問題はなかった。原因は結局わからない。論文書けない。本当にやばい。憂鬱。マジで。

今日の午後はニースから列車で20分ほどのところにあるアンティーブへの遠足だった。13時半にニース・ヴィル駅で学生たちと待ち合わせをしていたのだが、そのニース・ヴィル駅に向かうトラムの車内でiPhoneに電話がかかってきた。悪い予感しかしない。案の定、よくない話で、男子学生の一人がマクドナルドで昼食を取っているときに、iPhoneをすられたという話だった。保険会社に請求手続きを確認しなくてはならない。今日の午後にはアンティーブ遠足があるので、それを中止にするわけにはいかない。とはいえこの学生ひとりで事故処理は荷が重いだろう。明日の午前中に一緒に警察に行って盗難証明を貰うということになるだろう。フランスではフランス滞在が長い人でもスリの被害に合った人はけっこういる。ニース・ヴィル駅で当該学生に話を聞くと、注文と会計をすませたあと、商品を取りに行くときにスマホをポケットに入れたそうだ。おそらくそのポケットから盗られたのだろうと。私は盗難被害に遭った経験はないのだが、自分が被害者となればかなり落ち込むに違いない。海外旅行保険で補償されるとはいえ、その学生もかなり落ち込んでいるようだった。

体調を崩している学生が一人いて、アンティーブ遠足の参加者は私を含め16名だった。アンティーブ遠足はニース研修のときは毎回行っている。そのコースは駅から10分ほど海に向かって歩き、多数のレジャーボートが停泊している港を見て、そこから旧市街を一回りして、ピカソ美術館を見て帰るというものだった。港のさらに先の海に面した岸壁にカタロニアの現代芸術家、ジャウメ・プレンサの《ノマド》というモニュメントがあるのだが、これまではAzurlinguaの遠足担当者はこのモニュメントの近くまで案内してくれたことがなかった。ピカソ美術館への団体入場予約が16時半だったので、それまで2時間半ほど時間をつぶす必要が今日はあった。そこで今回は、《ノマド》の近くまで行って見ることにした。駅からは歩いて20分ほどだったと思う。アンティーブは紀元前4世紀頃にはギリシア人の植民都市となっていて、ニースの正面にあることからAntipolis(対面にある都市)と名付けられた。このAntipolisがアンティーブの地名の語源となっている。《ノマド》像のある位置からはニースがたしかによく見える。《ノマド》像は、白いアルファベットの文字を組み合わせて作られた膝をかかえて座っている人の姿をしている。そのなかは空洞だ。《ノマド》が膝を抱えて見つめているのは、ニースのさらに背景にあるイタリアだろうか。白い空洞である《ノマド》像は、海や防波堤など周囲の風景とうまく溶け込んでいた。あいにく小雨が時折降る曇りの日だった。晴れだったらもっと青く輝く海を背景に、白い《ノマド》のある風景はもっと印象的なものになったに違いない。




《ノマド》像のあとは、アンティーブの旧市街に入る。アンティーブの旧市街は規模が小さく、建物の高さも3階、4階建てくらいでニースより低い。ニースの旧市街のミニチュアのような感じで、本当に美しく、可愛らしい町だ。これまで行ったことはなかったのだが、この旧市街の広場にある、この町で活動していたイラストレーター、レモン・ペネ Raymond Peynet(1908−1999)の美術館に入った。ユーモラスで可愛らしいカップルの図像などで人気のイラストレーターで、軽井沢にも彼の名を冠した美術館があることをさきほどWebを検索して知った。このあと、1時間ほど、ピカソ美術館の入場予約時間まで、自由時間とした。私はカフェで時間をつぶした。





ピカソ美術館は団体入場は予約必須となっていた。他にも学校の生徒たちの団体がゾロゾロいた。そんなに大きな美術館ではないので、入場制限があるのはわかるのだが、そのコントロールがけっこう厄介で手間どった。10人以上で美術館に入るときは、今後は予約をかなり前に考えておく必要がある。予約前提でないと入れないところが徐々に増えている。

ピカソ美術館には40分ぐらいいただろうか?この美術館に所蔵されているピカソの作品は、戦後のものが多く、おおらかで自由な描線でサッと描かれた子供の絵のような作品が多い。学生たちはまた面白かっただろうか?実はこの美術館の所蔵作品は、ピカソの作品よりも、ニコラ・ド・スタールやアルトゥングの作品のほうが優れたものだ。ド・スタールはロシア、アルトゥングはドイツ出身の画家だが、どちらもアンティーブで制作を行い、この地で没した作家だ。





この後、私を含め6名はニース行きの列車を途中下車してカーニュにあるフランス料理レストラン、La TABLE DE KAMIYA に行った。神谷さんのツイッターを何年も前から追っかけていて、前から機会あれば行きたいと思っていたレストランだった。ただフランス料理ゆえ一人で食いに行くような店ではないし、また学生たちを誘うには値段が少々高めだったので、これまで行く機会がなかった。

今回はニースでまともなフレンチを高い金を出してまで食べたいという学生がいたので、それに乗じて前から行ってみたかったこのレストランを予約することにした。

私はフランス滞在中にいわゆるフランス料理レストランには滅多に行かない。フランスでちょっと気取ったフランス料理を食べるとなると、50ユーロぐらいは最低出さないと満足感の高い料理にありつくことは難しいだろうし、食べようと思えば東京にはもっと手頃な値段の美味しいフランス料理を出す店がいくらでもあるからだ。東京のフレンチとフランスのフレンチでは、料理の素材がそもそも違うし、サービスのありかたも違うのだけど、料理のクオリティでいうと、東京で5000円出せば食べられるレベルのフランス料理を、フランスで30ユーロぐらいで食べることができるかというと、それはかなり難しいと思う。どうせ海外にいるのであれば、そこでしか食べられないものを食べたい。フランスでそれは何かというと、様々な大衆的な郷土料理的なもの、フランスの旧植民地のアフリカなどからの移民がやっているエスニック・レストランということになる。この手のレストランは東京にもそんなにないし、あってもB級っぽい雰囲気が薄く、別の「エスニック」料理になっている。

La Table de Kamiyaについては、フランスでの料理修業のあと、フランスにとどまり、競争の激しい観光地、コートダジュールでフランス料理という領域で勝負している神谷さんの心意気に感じ入るところがあったし、彼がSNSで発信するメッセージにも共感するところがあった。私はフランスに押さえ込まれ、「負けて」しまった人間だけに、フランスでフランス人にもまれながらがんばっている日本人は無条件に応援したいという気持ちが強い。もちろん神谷さんがSNSで紹介する料理の写真や、彼の料理を称賛する数多くの高評価にも惹かれた。






食前のおつまみ、オードブル、メイン、デザートで45ユーロ。これに飲み物の値段が加わる。私には贅沢すぎる料理ではあるけれど、それぞれの料理に感じられる繊細さ、盛り付けの美しさ、各料理のコンビネーションが作るハーモニー、そして明るく開放的な店の雰囲気など、期待通りの満足いく内容だった。学生にはさらに贅沢すぎるように思う。食事中、なんか面白い話をひとりひとつずつするということになった。面白い話となると、私は性にかかわるエピソードしか思い浮かばないから困る。数日前にクスクスを学生たちと食べたとき、「エロい話しかできないよ」と言ったのに、それでもいいからということで、私が一番気に入っている話をしたら女子学生はけっこう引いていたとのこと。私は芸術、文化についての高尚な話か、エロい話か、そのどっちかしかできない。

私は学生はフランスでは毎食ケバブぐらいでちょうどいいと思っているのだけど、今回は私がこのレストランに来るきっかけを作ってくれたことには感謝しなくてはならない。

La Table de Kamiyaの鉄道の最寄り駅はLe Cros-de-Cagnes駅なのだが(私はCagnes-sur-merだと勘違いしていて、そのためレストランに行くときは30分弱歩くはめになった)、ニース行きの最終列車は21:45と思っていたより早い時間だった。これに乗り損なうと翌朝6時まで列車はない。バスを乗り継いでニースに帰ることは可能だが、その場合は列車で15分の距離が、1時間以上かかってしまう。この最終列車が10分以上遅れたので、ホームで待っていてやきもきした。私たち以外にはフランス人が一人いるだけ。駅は無人駅で、暗い。一人だけだったらさぞかし心細かっただろう。



ニース駅から女子学生一人を家まで送ってから帰宅。帰宅したのは23時を過ぎていた。

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