2020年3月3日火曜日

2020/03/02 ダブリンからゴールウェイに

空港ホテルに着いたのが深夜だったので、昨夜寝たのは午前2時前になった。
それでも朝8時に起きる。ホテルの朝食はバイキング形式だったが、さすがアイルランドの朝食。バラエティに富んでいて、量も豊富で、しかも美味しい。ホテル代は朝食込みだったので盛大に食べた。昨夜はビスケットの夕食だったのでその挽回だ。

ホテルは11時にチェックアウトし、シャトルバスで空港の長距離バス乗り場まで送ってもらう。ゴールウェイ行きのバスに乗る。料金は20ユーロで時間は3時間ぐらい。ホテルの人は無愛想だったが、バスの運転手は普通に親切で、運転も丁寧だ。ニースのバスとは全然違う。バスはダブリン市内を経由してゴールウェイに。バスに乗ると一気に気分が高揚した。

アイルランドに来るのは29年ぶりだ。大学4年のときに1年間パリに語学留学して、5月の終わりに語学学校の授業が終わったあと、3週間ぐらいアイルランドに行った。ゴールウェイ近郊の城館で行われたケルト音楽の講習会に出て、ティンホイッスルの講習を泊まり込みで一週間受けた。そのときに私にマンツーマンでレッスンしてくれたミュージシャンはも70すぎのおじいさんということになる。私もおっさんになった。嘘みたいだ。
22歳のころのアイルランド3週間は夢のような時間だった。灰色と青と緑のがらんとした空間に魅了された。人もみな優しくて、親切で、8ヶ月過ごしたパリよりはるかにアイルランドのほうが居心地がよくて楽しかった。また絶対来ようと思っていたのだが、その後、29年来る機会がなかったのだ。今回来ようと思ったのは本当になんとなくなのだ。

ゴールウェイの宿はバスステーションのすぐ目の前にあった。一泊40ユーロほどで安いが、朝食はついてない。エレベーターも壊れている。ただ安いわりにはシャワー・トイレ付きだし、部屋も広い。ここに2泊してから、アラン諸島のなかで一番大きい島、イニシュモア島に一泊する。その後の宿は予約していない。
とりあえず明日は、アラン諸島の真ん中にある島、イニシュモア島に行くことにした。シングが滞在した島だ。バスステーションの近くにあったアラン島のフェリー会社に行き、島行きの船が出るロサヴェールまでのバス往復と船の往復の切符を購入した。

スーツケースのキャスターの車輪の一つの外側のゴムが剥がれているのに気づいた。ごつごつとしていて運びにくいなあと思っていたのだ。買い換えるかどうか迷う。ゴールウェイ市内のショッピングセンターのカバン屋に安いスーツケースが売っていて、どうしようか20分ほど迷ったあげく買わなかった。明日の夕方、店が開いている時間までに町に戻って来れれば買おうと思う。閉店が18時と早い。

早めの夕食をフィッシュアンドチップスの店で取る。ついでに生牡蠣も食べた。地元の劇団であるドルイド・シアターによる『桜の園』の公演があるという情報を教えてもらったので、タウンホールまで行った。タウンホールに行くと、公演はそこから800メートルほど離れたボックス・シアターであり、当日券もそこで買えと張り紙がしてあった。小雨のなかてくてくと歩いていく。ゴールウェイはかなり寒い。防寒対策が甘かった。
ボックスシアターに着くと、劇場入り口は開いていたけれど、チケットカウンターらしき場所は閉じたままで、待合のホールもくらい。着いたのは18時半ごろだった。公演のポスターが貼ってあったが開演時間が書いていない。カウンターの前でぼーっと立っている人がいたので聞いてみると、その人は劇場関係者らしく中に入って声をかけ、チケットカウンターのかかりの人を呼び出してくれた。来るのが早すぎたようだ。開演は20時からとのこと。当日券を確保したあとは、会場までホールで待つことにした。

ドルイドの『桜の園』は、アイルランドの劇作家、トム・マーフィーの版によるもの。どのへんが改変されたのかはよくわからなかった。リアリズムの舞台装置だが、舞台中央に木の柱で枠を作った赤い幕を張ったプロセニアムを設置して、芝居という虚構性を視覚的に示している。ドルイド・シアターの舞台は、10年ほど前に東京でシングの『西の国のプレイボーイ』を見たことがある。そして29年前にゴールウェイに来たとき、この劇団によるジョン・オズボーンの『怒りを込めて振り返れ』を見たことを覚えている。
今回の『桜の園』は不器用な登場人物のちぐはぐな言動の滑稽さを強調して観客の笑いをとりつつ、原作の品格の高さはしっかりと維持され、登場人物の心理の動きを丁寧に描き出した素晴らしい舞台だった。笑いのなかで、思い通りにならない人生の悲しみ、喪失の寂しさが静かに増大していく。ゴールウェイでの最初の夜にこんなに繊細で美しい芝居を見られて幸せだ。

終演は22時半だったが、劇場から宿までは歩いて15分ほどというのもありがたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿