グルノーブルからパリに移動した。
10時19分グルノーブル発のTGVに乗車した。TGVのチケットはiOSのアプリで予約できて、プリントアウトする必要もない。TGVのチケットは同じ日でも何時の列車を選ぶかで値段がかなり違うのだが、私の乗車したTGVでは2等車と1等車で値段が6ユーロしか変わらない。1等車を購入した。パリまで78€。550キロぐらいあるので、日本の新幹線に比べるとかなり安い。
一人席を選んだら、向かい合った前の座席に知らないおじさんが座って気まずかったが、おじさんはじきに空いていた座席に移動した。グルノーブル発パリ行きTGV一等車はかなり空きがあった。
パリのリヨン駅には午後1時すぎに到着。宿は13区の端にある研修センターみたいなところだ。スーツケースが重いのでタクシーを使った。
宿にチェックインする際にクレジットカードで決済しようとしたら、端末が決済を拒否して支払いができなかった。別のカードを使っても同じ。フランスでクレジットカードを使うとちょくちょくこんなことがある。歩いて5分ほどのポルト・ディタリーに行けばATMがあると言うので、そこまで現金をおろしに行く。カードの問題でまた処理ができなかったらどうしようかと思ったが、銀行のデビットカードで出金できた。やはりカードではなく、ホテルの端末の問題だったようだ。
お金をおろしたあと、スーパーに入って水と食料品を購入する。
ホテルの部屋にはいったらまず昼飯。さっきスーパーでかったビスケットとソーセージを食べた。ご飯を食べると眠くなってしまった。今日の用事は午後8時開演の芝居だったので、1時間ほど眠る。
夜はオデオン座アトリエ・ベルティエに『ペレアスとメリザンド』を見に行った。演出はJulie Duclos。ドビュッシーのオペラで有名な作品だが、私はこれまでこの作品を舞台で見たことがなかった。オペラ版はロラン・ペリ演出、ナタリー・デセ出演のDVDは見たことがある。
コロナウイルス対策で1000人以上の集会はフランスではできなくなっている。ベルティエはたぶん500人ぐらいでこの禁止事項にひっかからないか、コロナウイルスで観劇を控えたひとがいたのか、客席には空席が多かった。開演時間になると劇場スタッフが「空いた席に移動してかまいません」と言ったので、私は最前列中央の席に移動した。
ジュリー・デュクロ演出の『ペレアスとメリザンド』は素晴らしい舞台だった。洗練されたセノグラフィと映像の使い方は、今のフランス演劇の演出の潮流にあるものだが、その卓越した現代的センスの舞台で、戯曲の世界を丁寧に展開させていた。戯曲をほぼ忠実に再現した舞台だった。前後に移動する二階建ての舞台美術と紗幕に映し出される映像とのコンビネーション、ニュアンスの豊かな照明が、テクストの象徴的な要素を効果的に浮かび上がらせている。テクストを読んでイメージした世界が、精緻な演出によって見事に具現化されていた。
夜は食べないつもりだったのだが、最寄り駅のポルト・ディタリーのそばにあるケバブ屋が営業していた。「店で食べていいか?」と聞くと「もちろん」という返事。
骨付き羊肉の定食を頼んだ。ケバブ屋の定食は安くてうまい。骨付き羊肉を焼いただけのシンプルな料理だけれど、肉の旨味が濃くて実においしい。この手のケバブ屋は、夜遅くまで開いているし、うまいし、安いし、一人で入りやすいし、スタッフも感じがいい人が多いし、一人旅には実にありがたい存在だ。
飯を食っていると、白人のおばさんが「トイレを貸して」と店に入ってきた。店のおじさんが「貸してもいいけど、なんか購入してくれ」と言うと、「わかった、あとでなんか買うから。とにかくトイレ」と言って、地下のトイレに行った。
ところがこのおばさん、トイレを使い終わったあとは、「それじゃあね、ありがとう。さよなら」と何も買わずに出ていってしまった。
おじさんは苦笑いしていた。
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