2020年3月6日金曜日

2020/03/05 スライゴー

イニシュモアから本土のロッサヴィール行きのフェリーは今の時期は、朝8時15分と夕方17時の一日二便だ。私は朝の便で戻った。B&Bでの朝食が7時半からだったので(朝8時15分の便で出る客の朝食は7時半と決められていた)、アイリッシュ朝食をちょっとあわてて食べることに。ダブリン空港のホテルで最初の日に食べたときはアイリッシュ朝食のバラエティと量に感動したが、ちょっと重すぎるなあと思うようになった。ちょっと胃もたれするというか。それでも全部食べてしまうのだけど。朝がアイリッシュだと昼を抜いて、夜の食事を早めに取ればそれで十分だ。

ロッサヴィールに到着したのが9時頃。それからバスでゴールウェイ市内に向かう。この朝の帰りのバスは路線バスと共用になっているのか、二階建てバスで高校生っぽい若者が大量に乘っていた。アイルランド人の女性は(少なくとも若い人たちは)みなロングヘアーであることに気づく。

ゴールウェイに着いたのが10時。観光案内所にまず寄ってスライゴー行きのバスの停留所を教えてもらう。時刻表をもらうと10時半出発になっていた。案内所を出て昨日まで二泊していたホテルに向かい、預けていたスーツケースを受け取る。スーツケースを預けるときは「チェックアウト当日しか預かることができないんだが」とグズグズ言っているのを、無理やりという感じでお願いして預かって貰ったんで、スーツケースを受け取るときに5ユーロのチップを渡そうとしたのだが、昨日グズグズ言っていたお兄さんは「いや、お前はいいやつだから」とか何か言って5ユーロ札は受け取らなかった。

ゴールウェイからスライゴーまではバスで2時間半かかる。長距離長時間にも変わらず、間に停留所が十数か所あったので、いわゆる「長距離バス」ではなく路線バスの車両で、スーツケースを入れるトランクスペースがなかったらどうしようとちょっと心配だったのだが、ちゃんとトランクスペースはあった。観光案内所で渡された時刻表には「デリー行き」とあったので、乗るときに運転手に「スライゴーに着いたら、おれに着いたよって言ってくれ」と念を押すと、運転手は一緒にいた友人らしき人と大笑いした。到着してわかったのだが、私の乘ったバスはスライゴーが終点だった。

イエイツ研究者の知り合いに「スライゴーの見どころを教えてください」とメッセージを送ると、「見どころと言ってもイエイツの詩を知らない人がいっても面白いところだと思えないんだけど」というネガティブな返事が戻ってくる。

今回はアイルランド行き自体一月末に突然決めたのだが(ニースでの研修を終えた学生の出発を空港で見送った後に、ダブリン行きの直行便に乗ることができることを見つけたので)、当初はアラン諸島に行くことしか決めていなかった。スライゴーに行くことにしたのは、ずっと前からイエイツ戯曲を上演している平原演劇祭の高野竜さんがスライゴーでイエイツ作品を上演する企画があるらしく、「アイルランド行くんだったら、スライゴーも寄ってよ」とツィッターで言われたのがきっかけだ。あと今回のアイルランド旅行の主要ガイドブックである渡辺洋子先生の著作『アイルランド:自然・歴史・物語の旅』のなかでもスライゴーとその周辺にかなり多くのページが割かれていて、それを読んで寄ってみようかなと思った。
イエイツの詩は、ウォーター・ボーイズのマイク・スコット(今は女性性器アートで知られるろくでなし子の夫になっている!)が企画したイエイツの詩に基づく歌曲アルバムで取り上げられているものしか知らないが、そのなかにはスライゴー近辺の風景を歌ったものがあるので、それを思い浮かべながら見て回ることにしよう。ちなみにこのアルバムはmixiで知り合ったスコットランド大好きな人に教えてもらったものだ。

スライゴーは私が想像していたよりずっと小さい町だった。私は自分が行ったことのあるフランスの地方都市、アラス、レンヌあたりをなんとなく思い浮かべていたのだが、バスターミナルで降りて「え!」という感じだった。3階建ての可愛らしい建物が並んでいる田舎町だ。規模的には東上線の成増あるいは大山ぐらいか。イエイツのような大作家がまさか成増・大山と所縁が深いなんてことは考えにくいのだが、イエイツの神秘的・幻想的な世界とはかけはなれた北国の田舎町という感じだった。

とりあえずホテルに行って荷物を置く。Booking.comで昨日夜に予約したのだが、案外開いているよさげなホテルが少なくて、予約可能なホテルのなかで評価が比較的高いホテルを選んだ。ダブルベッドとシングルベッドが置かれた広い部屋で、私にはもったいない部屋だった。浴槽もある。一人旅なんでもっとわびしい宿のほうが自分にはふさわしいのだが、なまじbooking.comなどのサイトで利用者評価があるとその点数を気にしてしまう。評価と値段ははっきりした相関関係があって、安くていい部屋というのはまれだ。フランスで何回かホテルに関してひどい目にあっているので、それがトラウマになってつい評価の低いものは避けてしまう。

荷解きをしてから観光案内所に向かう。スライゴー近隣のいくつかの場所への交通手段について確認した。フランスでは行くところや何をやるかはほぼわかっているので観光案内所では無料の観光地図を貰うぐらいだが、アイルランドはほぼ未知の場所で、何がどこにあるのかも知らないため、これまで何回か観光案内所で問い合わせをした。「フランス語か日本語で説明してくれないか?」と一応言ってみるが、どこも英語だけだ。普段英語を話す機会がないのでなかなか単語が出てこなかったりするが、どこも親切につきあってくれる。観光案内所だから当たり前じゃないかと思う人がいるかもしれないが、フランスでは必ずしもそうではない。

サービスについてはフランスでは人や状況によるムラがはげしい。親切な人に当たればいいんだけど、不親切で無責任なサービスにあたって不愉快な思いをすることもけっこうあるのだ。アイルランドはそのムラがあんまりない。こちらは英語も拙いし、手順や習慣などわからないのでまごまごすることがけっこうあるのだが、どこでも普通に親切で愛想がいいので、安心してものを聞くことができる。フランスだと常に「なめられたらアカン」とどっかで構えているので。これは私のフランス人に対する偏見が入っているかもしれないが。

観光案内所のあと町中をぶらぶら。たしかに観光的な見どころはない。イエイツがらみでないと何の変哲もない田舎町だろう。まあ私はそれでもかまわない。毎日せっせと観光に励む必要はないし、暇つぶしのしかたは他にもあるので。
町の現代美術館を見たあと、市内の重要な観光史跡である修道院廃墟に向かったのだが、修道院廃墟はオフシーズンで閉まっていた。復活祭の時期に再オープンするそうだ。まあ一人旅ではありがちのことだ。グーグルマップを信用しすぎていた。フランス語のガイドブックを読むとちゃんと冬期は休館と書いてあった。

夜はグーグルマップのおすすめで出てきた中華料理屋に行く。アイルランド料理はちょっと今夜はいいやという気分だったので。中国人がやっている店かと思ったら、店員は全員アイルランド人だった。サービスも洋食屋風だ。はしは出てこない。
前菜に手羽先のからあげ、主菜にエビチリとチャーハンを食べた。洋皿に盛られ、ナイフとフォークとスプーンで食べる中華料理だったが、味は普通においしいかった。量がかなり多い。レストランでの食事は多すぎるのだけれど、出されたら全部食べてしまう。こんな食事をしていたら、四旬節ダイエットどころではない。すでにベルトが苦しくなっている。
明日からはレストランでの食事はなるべく避けるようにしようと思った。

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