2020年3月5日木曜日

2020/03/04 イニッシュモア島

ゴールウェイを離れ、昨日に続きアラン諸島に行った。今日はアラン諸島で一番大きい島、イニシュモアに一泊する。
イニシュモアから戻ったあと、ゴールウェイにもう一泊するかどうか迷ったが、明日の午前中に一度ゴールウェイに戻ったあと、そののままバスでスライゴーに移動することにした。
イニシュモアにはスーツケースを持って行きたくなかった。ゴールウェイの宿にチェックアウト時に明日の午前中までスーツケースを預かってくれないか尋ねると、チェックアウトの日の数時間ならともかく、まる一日預かることはできないとの返事。
そこを何とかとお願いしたら、渋々だったが了承してくれた。イレギュラーな依頼を無理やり承諾させたかたちになったので、明日ちゃんとスーツケースがあるのかどうかちょっと不安だ。イニシュモア島にはリュックサックに一泊分の荷物を詰め込んで行った。




昨日同様、9時半にシャトルバスに乗りゴールウェイからロッサヴィールに向かう。10時半発のフェリーに乘って、イニシュモアに着いたのは11時15分頃だった。イニシュモアは観光の面でもアラン諸島で最も重要な島だ。島の人口は800人弱。昨日のイニッシュマン島と違い、港のすぐそばいに建物が何軒かある。ここで降りた観光客も20名ぐらいはいたように思う。島は東西に12キロぐらいの長さがある。レンタサイクルを借りた。値段は一日10ユーロ。それから観光案内所により、無料の地図をもらい、島のみどころを教えてもらう。
宿は港から600メートルほど離れたところにあった。B&Bだ。敷地に入ると犬が迎えに来たが、B&Bの主人は呼び鈴を出しても出てこない。犬といっしょに家の周りをうろうろしていると、B&Bの主人が出てきた。今日の宿泊客は私だけのようで、部屋は広くてきれいだった。浴槽付きなので久々に風呂に入れる。
まず近くのバーに昼飯を食べに行った。メルルーサという白身魚の揚げ物を食べる。それから自転車で観光に出かけた。イニシュモアで一番の見どころは、断崖絶壁にある要塞、ダン・アンガスだ。港からは8キロほどの距離がある。島のなかほどの道を選び、まずダン・アンガスを目指すことにする。

ダン・アンガスに行くまでの道のりの風景も壮大で魅了されたが、絶壁を取り囲むように築かれたダン・アンガス要塞の廃墟の風景は圧巻としか言いようがない。この地に人が住んでいたことは、考古学的調査により紀元前1000年から1500年ころまで遡ることができるらしい。しかしなんでこんな岩でできた不毛の島にわざわざ居住しようと思ったのか。

地面が岩で土がほとんどないこの島では、畑や牧草地を作るために、海から海藻を地上に運んできて、それを砕いた岩と混ぜて土を作ることから始めなくてはならなかった。強風によってせっかく作った「土」が吹き飛ばされてしまうことを防ぐため、石垣を作って風よけとした。緑の牧草地を四角く区切る石垣が延々と続くさまが、アラン島の独特の景観を形作っている。この風景ができるまでに何百年のときが必要だったのだろうか。緑の大地を区切る黒い石垣の風景は、風よけという実用を超えた審美的な空間を作り出している。広大な自然環境を素材とする芸術作品だ。

ずっと私が探していた風景にようやく出会えたような感じがした。こんな素晴らしい景観にもかかわらず、本当に人がいない。シングの時代から100年以上たっているというのに、本気で観光で人を集める気がないのか。昨日のイニッシュマンには観光客は私一人だけだった。アラン諸島観光の中心であるイニッシュモア島に今日やってきた観光客もせいぜい3、40名だろう。いくらシーズンオフとはいえ、なんでこんなに人が来ないのか。
ダン・アンガスのあとは、その2キロほど先にある7つの教会の跡地に行った。この教会廃墟も古いものだ。廃墟の横には島の人々の墓地があった。墓地には杖を使ってよろよろ歩いている老夫婦がいた。どちらも足元がおぼつかないが、おばあさんのほうが少し足が達者だ。おばあさんが「スティーブン、こっちだよ。こっちを歩けばいいよ」とおじいさんを案内し、手を引いている。おじいさんはもしかすると少しボケているのかもしれない。私に二回挨拶して、「どこから来たんだい」と二回同じ質問をした。

他にもイニシュモア島には見どころはあるのだけれど、この2つの遺跡を見ただけで今回は十分だ。29年前にはじめてアイルランドに来て、ゴールウェイに滞在したときに、アラン諸島を訪ねていたらなあと思った。私のその後の人生で今とは違った選択をしたかもしれない。イニシュモア島の風景はまさにわたしがずっと待望していた、夢想していた風景だったのだから。でも50歳を過ぎてアラン諸島に来ることができて本当によかったと思った。私はまたアイルランドに来るはずだ。イニシュモア島の他の遺跡や今回足を運べなかった一番東側にある小さな島、イニッシュエアは、次回アイルランドに来るときのために取っておくことにしよう。

午後5時までにレンタルした自転車を返さなくてはならなかった。帰りは海岸通りの道を通った。この海岸沿いの道からの風景も本当にすばらしいものだった。
私はこれまでの人生で、こんなに景観に魅了されたことはない。これほど風景を美しいと思ったことはない。厳しい自然環境との対峙することで長い年月をかけて作られたイニシュモアの風景は美しいだけでなく、われわれの存在の意味を問いかけてくるような思索性も感じてしまう。

夕暮れから夕闇の時間帯の海の風景も素晴らしかった。引き潮であらわになった濡れた砂地が、空の明るさを反射して白く光っている。イニシュモアに一泊してよかったと思った。できれば明日の朝の船ではなく、夕方の船にして、ゴールウェイにもう一泊するのでもよかったと思ったけれど、しかたない。また来ればいいのだ。

夜は宿近くにあったバー&レストランで食べた。スープとスモークチキン。スモークチキンにはマッシュポテトと人参が大量に添えられていた。ケベックのレストランで似たようなものを食べたような気がする。


0 件のコメント:

コメントを投稿